細菌感染後の細胞内では、インフラマソーム形成によるカスパーゼ(CASP)1の活性化や、制御性細胞死であるパイロトーシスの誘導が細菌感染から生体を防御するために重要とされている。インフラマソームはNOD様受容体(NLR)、ASCおよびCASP1前駆体(pro-CASP1)から構成されるタンパク質複合体である。これまでにメダカにおける3つのasc およびcasp1遺伝子を同定し、ASC-1変異メダカおよびCASP1ノックアウト(KO)メダカを作製した。さらに、CASP1 KOメダカでは細胞内寄生細菌Edwardsiella piscicidaに対する感受性が高いのに対して、ASC-1変異メダカでは低いことを明らかにした。この現象への理解を深めるためには、インフラマソーム関連分子の役割をより詳細に解明する必要があると考え、メダカにおけるインフラマソームのセンサー分子を同定およびそれらを介した細胞死誘導について検討した。 まず、インフラマソームの形成に重要であると考えられるピリンドメイン(PYD)を有するNLRPサブファミリーに着目し、Cab系統メダカのNLRファミリーで唯一PYDを有しているnlrp12遺伝子を同定した。また、メダカnlrp12遺伝子は、E. piscicida浸漬72時間後に発現が増加した。さらに、培養細胞で過剰発現させたメダカNLRP12およびpro-CASP1は全てのASCと共局在した。E. piscicida感染後のASC-1変異メダカおよびCASP1 KOメダカの腎臓細胞における細胞死の割合は、野生型メダカに比べて低かった。以上のことから、メダカNLRP12は細胞内でインフラマソームを形成することが推察され、E. piscicida感染後の腎臓細胞では、ASC-1およびCASP1がパイロトーシス誘導に重要であることを示した。
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