本年度は、研究が概ね計画通りに遂行された。主として、リー・ショーマンを起点とする教師の知識研究における広がりと展開を論文として発表した。広がりについては、事例が紡ぐ教師のコミュニティ論に関する検討を「コミュニティにおける教師の学びに関する考察」と題して『日本教師教育学会年報』で発表した。また、展開については、ショーマンの所論を批判的に乗り越えようとしたパメラ・グロスマンによるコア・プラクティス論を検討した論文「教師の知識論の系譜における『実践的転回』」を『京都大学大学院教育学研究科紀要』において発表した。コア・プラクティス論のほかに、展開として、PCK(Pedagogical Content Knowledge)を拡張したTPACK(Technological Pedagogical Content Knowledge)の議論を昨年度からさらに深め、本年度はその研修のあり方についても検討した。 また、ショーマンによる教師の知識論が醸成される土台としてのアメリカの教育学研究の状況に関して、翻訳、あるいは紹介の論稿を発表した。さらに、アメリカの教師教育論を相対化するために、日本における教師教育改革のレビューや実際の教師たちの学びに関する検討も行った。 海外渡航が厳しい中で、電子メールを用いて未公刊資料を含め様々な史資料の収集も行うことができた。これらの史資料を一部用いて本年度は研究を遂行した。
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