研究実績の概要 |
素粒子標準模型を超える統一理論としてM理論が期待されている。M理論の対象とする物体の1つにM2ブレーンと呼ばれる膜状物体がある。そしてABJM理論はM2ブレーンを記述する理論であり、この理論は高い対称性により局所化法を通じて、多重積分で記述されるABJM行列模型にすることができる。そして、この行列模型はP^1×P^1の構造をもつスペクトラル演算子で特徴づけられる。また、系の対称性を拡張する意味でのABJM行列模型の拡張も存在する。このようなABJM行列模型やその拡張を調べることは、統一理論として期待されるM理論の理解に繋がると期待できる。ABJM行列模型の拡張に対して2021年度に私が行った研究は、受入研究者である森山翔文氏(大阪市立大学、NITEP)と中西智暉氏(大阪市立大学)との共同研究[Furukawa, Moriyama, Nakanishi, arXiv: 2010.15402 [hep-th]]である。この研究の大きな結果は、IIB理論と呼ばれる超弦理論におけるブレーン配位の、今まで知られていなかった局所的な変換をABJM行列模型の拡張の観点から提案したことである。先行研究[Kubo, Moriyama, JHEP 12(2019)101]において、ブレーン配位と、行列模型を特徴付けるスペクトラル演算子の対応付けから、スペクトラル演算子のもつ例外Wely群をブレーン変換と解釈することで、よく知られたHanany-Witten変換の他に、新たなブレーン変換が現れることが明らかになっていた。そして我々は、先行研究よりも複雑な構造をもつスペクトル演算子に対して同様のブレーン変換を見出し、さらに進んで新たなブレーン変換の局所的な理解を得ることもできた。
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