当該年度では、異なる調査手法の調査結果を調和化するため、①漂流ごみ、②漂流マイクロプラスチック、③海底ごみのそれぞれを対象として、異なる調査手法による同時比較調査を行い、その結果を取りまとめた。 ①においては、調査船舶に観測場所を複数設け、同時に異なった高さ(6 m、10.8 m)から目視観測調査を行い、観測場所の高さが結果に与える影響を調査した。この結果、調査結果に影響したのは観測場所の高さではなく、観測チームによる人為的な差であった。しかし、結果に影響を与える要因に関わらず、漂流ごみの発見個数と船体からの横距離から漂流ごみが見落とされやすい範囲を定め、解析に組み込むと、観測条件の差を補正できることが明らかとなった。これを用いれば、異なる研究機関で行われた調査結果であっても、漂流ごみの発見個数と横距離が分かれば、結果の補正を行うことが出来る。 ②では、目合いの異なるニューストンネット (0.350 mm、0.200 mm、0.100 mm) の同時曳網を行った。各目合いを組み合わせた比較曳網結果から、形状別に選択性曲線を推定することによって採集効率の違いを明らかにした。この研究結果から、これまでに0.350 mmのネットで採集されたマイクロプラスチック量は、実際にはその数倍多く海洋中に存在していることが明らかとなった。この結果については、2021年度日本水産工学会学術講演会にて2件発表を行った。 ③では、同一調査地点で水中カメラと底びき網を用いて、海底ごみの観測を行った。この結果、水中カメラによる調査は、調査時の環境要因が大きく影響するため、海底ごみ量を定量的に判断することは困難であった。しかし、水中カメラによる調査で観測されたサイズのごみは、底びき網の網目から抜けるため、水中カメラによる調査結果を用いて、底びき網での調査結果が補正できる可能性が示唆された。
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