研究課題/領域番号 |
20J15157
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
渡邉 萌 熊本大学, 自然科学教育部, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 災害復興 / 熊本地震 / 災害公営住宅 / 応急仮設住宅 / パネルデータ / 住まい意向 |
研究実績の概要 |
採用期間の1年目である令和2年度において,被災世帯の住まい意向に関する三時点にわたるパネルデータの動的な解析に取り組み,住まい意向が時間経過とともに大きく変化することを明らかにした.なかでも,発災直後の住まい意向と最終的な災害公営住宅入居申込の有無との関係性を明らかにしており,これは災害公営住宅の最終的な入居需要を予測する上で重要な知見であるといえる.得られた成果は,海外の審査付き論文誌であるInternational Journal of Disaster Risk Reductionに掲載された.また,より詳細な分析を行うために,使用データの分析に適した新たなパネルデータの解析手法の構築に取り組んだ.新たに構築した手法は,構造上パネルデータの解析だけでなく因果推論にも適用可能である.そこで居住地選択と自動車保有の関係性を分析するために構築した手法を適用し検証を行った.具体的には,熊本都市圏の市街地部と郊外部における自動車保有率の差を明らかにし,提案手法の有効性を示した.構築した手法は国内学会にて他の研究者らとも議論を交わしており,改善を重ねている.構築した手法により得られた成果は海外の審査付き論文誌へ投稿中である.以上より,今年度はパネルデータを動的に解析するとともに,新たな解析手法の構築に取り組むなど,来年度の分析に向けた準備を着実に進めた.また審査付き原著論文2報を筆頭著者で発表しているなど,研究成果を継続して挙げている.来年度は最終年度であるが,パネルデータの解析を引き続き実施し,災害復興施策に有益な知見を得ることを予定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採用1年目となる令和2年度において,おおむね計画通りに研究を遂行することができた.具体的な研究成果として,審査付き原著論文三報 (うち二報で筆頭著者) を発表している.また,進行中の研究を国内の学会で発表し,意見交換を行った.以下では,より詳細に報告する. まず,熊本地震後の益城町における被災世帯を対象に,三時点にわたる住まい意向を分析した.分析の結果,災害公営住宅への入居意向は時間の経過とともに大きく変化することを明らかにした.また,震災後の居住地が入居希望地の選択に影響を与えている点を明らかにした.これらの結果を国内会議にて発表し,震災復興に関する研究者らと有益な議論を交わした.さらに,審査付き論文として発表している.この結果は被災世帯の入居意向の経時的な変化をより詳細に分析する必要があること示しており,分析に適したパネルデータの解析手法を新たに構築することにした.そこで,まずは既存のパネルデータ解析手法を用いて,異なる都市環境における時間利用行動の周期性の違いに関する分析を行い,その成果を審査付き論文として発表した.この研究を通して,パネルデータの持つ性質とその解析方法を理解することができた.また,そこで得られた知識を基に,新たな解析手法を独自に開発し,その成果を国内学会にて発表した.その成果は既に論文としてまとめており,現在投稿中である.したがって,おおむね本研究課題の計画に沿って順調に進展していると判断している.採用2年目となる今年度は,その独自のパネルデータ解析手法を,益城町における住まい意向データに適用し検証を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は現在まで順調に進展しており,研究計画の変更は必要なく,また研究を遂行する上での問題も生じていない.そのため,最終年となる令和3年度では計画通りに研究を遂行し,研究目的の達成を目指す.具体的には,パネルデータの解析手法を新たに構築し,益城町における住まい意向データに適用する.これにより,災害復興施策に有益な知見を得ることを予定している.
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