研究実績の概要 |
前年度に実施した熊本地震後の益城町における被災世帯を対象とした住まい意向の三時点パネル分析を通して,被災世帯の入居以降の経時的な変化をより詳細に分析する必要があることが示された.必要な分析を実施するためには,データ構造に適した手法の開発が必要であったため,採用期間の最終年度である当該年度では (a) 2値の結果変数を扱うサンプルセレクションモデルの開発,(b) 多項型のサンプルセレクションを記述可能なモデルの開発,(c) 選択肢相関を記述可能な操作変数モデルの開発を行った.(a), (b) のモデルは,復興期の被災者を対象としたパネルデータの脱落 (パネルアトリッション) や,住まい再建意向の経時的な変遷を記述可能なモデルである.シミュレーションと交通調査データを用いた実証分析を実施し,開発したモデル (a), (b) の検証を行った.これらの成果を国内外の学会にて発表し,様々な研究者と議論を重ねた.また,(c) 選択肢相関を記述可能な操作変数モデルは,災害前の居住地区,被災後入居した仮設団地など,被災者が所属している集団から受ける影響 (Peer group effect) の有無を検証可能なモデルである.シミュレーションによりモデルのパフォーマンスを検証し,その結果は2022年5月に開催される国際学会にて発表予定である.開発したこれらのモデルを用いた益城町の住まい意向データの分析は採用期間内に行うことはできなかったが,将来的には住まい意向データの三時点パネルデータ解析への適用を予定している.
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