研究課題/領域番号 |
20J15388
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
藤田 道也 横浜国立大学, 環境情報学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 重合性物質 / 反応速度解析 / 高感度熱量測定 / 詳細反応モデル |
研究実績の概要 |
本年度は、反応性化学物質である重合性モノマーのアクリル酸(以下、AA)およびアクリル酸メチル(MA)を対象とした反応解析を主に実施した。重合性モノマーが呈する自発熱重合とその前段階におけるマイケル付加反応や自動酸化反応の生成物把握や反応速度の定式化を実施した。さらに、純理論的に素反応式、反応速度、熱力学情報を抽出、算出し生成物の組成変化や発熱挙動などをシミュレーションした。シミュレーション結果を実験結果で比較・検証することでシミュレーションの根拠となる素反応式、反応速度、熱力学情報における改良点を明確化した。本実施内容を引き続き実施しブラッシュアップさせることで、将来的には実験結果を再現する素反応式、反応速度、熱力学情報を特定し、重合性モノマーが示す反応を素反応レベルで理解することを目指す。以下に各実施事項の詳細について報告する。 AAおよびMAが示す自発熱重合反応のkinetics情報を密封セル示差走査熱量測定(SC-DSC)により分析した。Friedman法により実験結果を再現するFriedman plotとFriedman plotに基づき暴走反応に遷移するまでの時間を算出した。AAが示すマイケル付加反応と呼ばれる発熱反応に関し高感度熱量測定により広範な温度条件において進行を捉えることに成功し、発熱量を100 J g-1と実測した。反応速度式はn次反応モデルフィッティングにより広範な温度条件で良い予測を与えることが分かった。 また、純理論的な詳細反応モデリングによりAAマイケル付加反応によるヒートフローを算出した結果を実験値と比較すると、シミュレーション結果は一部の温度条件で実験値を良好に再現した。結果より、詳細反応モデリングにおけるAAマイケル付加反応機構として、AAアニオンが起点となることが予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年次計画とおり進捗している。一年目では、①詳細反応モデルに基づく詳細反応シミュレーションを実験結果により検証すること、②検証された詳細反応モデルに基づき反応遷移過程を抽出すること、③①および②といった詳細反応解析が化学産業における安全対策構築における有効性について検討すること、を実施する計画であった。上述の通り、アクリル酸およびアクリル酸メチルを対象として、これらの実施項目が遂行できている。 したがって、進捗状況はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
二年目は、化学産業の爆発・火災リスクアセスメントにおけるリスクシナリオ特定における詳細反応解析による反応遷移過程抽出の有効性を検討する。検証された詳細反応モデルに基づき、化学種濃度や温度、圧力などのパラメータに対して感度解析を実施する。反応に与える感度が大きく、反応が燃焼や爆発などの現象を引き起こしうる反応条件を特定する。このように純理論的に予測された現象に基づきリスクシナリオを特定する手法のリスクアセスメントへの適用可能性や、有効性について検討する。
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