Protein Kinase C (PKC)は細胞の生死を決定する上で重要な役割を果たしていることから、PKCの制御機構を明らかにすることは極めて重要である。高等生物のPKCは熱やヒ素などの環境刺激に応答してストレス顆粒へ移行することは報告されているが、PKCの制御機構との関係については未解明である。 本研究では、「ヒトPKCの分裂酵母オルソログであるPck2のストレス顆粒移行」に焦点をあて、ストレス顆粒がPck2及びその下流のMAPKシグナルの活性にどのような影響を与えるのか、また申請者がPck2/MAPKシグナルの制御因子として同定した、ストレス顆粒の構成因子であるDed1がPck2のストレス顆粒移行に与える影響、及びDed1によるPck2/MAPKシグナル制御機構を明らかにすることで、今までに提唱されていない、PKC の活性制御機構やPKC/MAPKシグナル制御の場としてのストレス顆粒の役割を解明することを目的としている。 令和3年度では、①Pck2及びDed1を過剰発現させると非ストレス条件下においても、ストレス顆粒が形成され、Pck2及びDed1自らもストレス顆粒へ移行すること、②Ded1を過剰発現させると、Pck2のストレス顆粒移行が促進されること、③Ded1過剰発現がPck2のストレス顆粒移行を促進させるためには、Ded1のヘリケース活性、並びに、Ded1自らのストレス顆粒移行能が必要であること、を明らかにした。 これらの成果は、令和2年度の「SGsによるPck2/Pmk1 MAPKシグナルを制御するための負のフィードバック機構」に関する研究では解明されなかった、「Pck2のSGs移行の詳細な制御メカニズム」を明らかにする上で極めて重要な知見が得られたと考えている。
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