研究課題/領域番号 |
20J15414
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山野 雄平 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 人工核酸 / 修飾核酸塩基 / 光架橋 / 可逆性 / SNA |
研究実績の概要 |
これまでに申請者らは、人工核酸SNA: Serinol nucleic acidに2残基の修飾塩基PVA: 8-Pyrenylvinyl adenineを導入し、PVA間の可逆的な光架橋反応を利用することで、SNAの二重鎖形成能の光制御に成功している。 今年度はPVAとは異なる波長の光を用いたSNAの光制御を目指し、新たにEVA : 8-Perylenylvinyl adenineとNVA: 8-Naphthylvinyl adenineを設計し、それぞれを導入したSNAを合成した。 SNA中の2残基のEVAは波長530 nmの光照射によりPVA同様の架橋反応を起こしたが、その反応性は低く、不可逆的であった。また、RNAと二重鎖形成させた状態では架橋反応自体も抑制されてしまい、EVAを利用した可視光のみによるSNAの光制御は困難であることが示された。一方、SNA中の2残基のNVAは405-340 nmの光により速やかに架橋し、続けて≦300 nmの光を照射すれば照射前の非架橋SNAが再生することも確認された。また、興味深いことに、PVAとNVAを1残基ずつ導入したSNAに465-405 nmの光を照射した場合にはPVA/PVA間でヘテロな架橋体が形成され、この架橋体も≦340 nmの光で開裂することが明らかとなった。NVA/NVA、PVA/NVAの架橋・開裂反応は相補鎖RNA存在下でも極めて効率的に進行し、これらの反応を用いても二重鎖形成を光制御できることが示された。さらに、4種類の光(465 nm、405 nm、340 nm、300 nm)を使い分けることで、それぞれの架橋・開裂反応を直交的に制御できることも確認された。つまり、本設計を用いれば二つのSNA/RNA二重鎖の形成・解離を同時かつ選択的に制御できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、新たな光応答性核酸塩基NVA: 8-Naphthylvinyl adenineを開発した。また、NVA同士の光架橋反応を利用することで、これまでとは異なる波長の光を用いてSNAの二重鎖形成を光制御することに成功した。さらに、前年度までに開発したPVA: 8-Pyrenylvinyl adenineとNVAの光架橋反応を組み合わせることで、二つのSNAの二重鎖形成を直交的に光制御できることも見出した。以上のことから、おおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まずRNAを鋳型としたSNAの光ライゲーションを試みる。末端にPVAを導入した 二種類のSNA鎖断片を合成し、(二つのSNA配列中のPVAが隣り合うように)相補鎖RNAとNick入り二重鎖を形成させる。この二重鎖に対し可視光を照射する事でライゲーション反応が進行し、紫外光照射により架橋開裂が起こるかを吸収・蛍光スペクトル、HPLC、ゲル電気泳動および MALDI-TOF-MSによる質量分析を用いて調べる。ライゲーション反応が確認されたら、SNAを用いたロタキサン構造の形成を試みる。ここでは、鋳型RNAの両末端を嵩高いDNA構造体でキャップする。PVAが導入された二つのSNA断片同士を鎖状linkerでつなぎ合わせる。このSNA-linker複合体と、DNA構造体でキャップされた鋳型RNAとを二重鎖形成させる。ここに可視光を照射し、ロタキサンが形成されるかを、ゲル電気泳動・HPLC、AFM等で解析する。また、紫外光照射で構造が開裂可能かも確認する。さらに、過剰量のSNA-linker複合体を加えた条件で可視光照射し、ポリロタキサンの作製を試みる。
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