大学教育におけるPBLの諸問題について、PBLを中断した実践や、現在も継続している実践などの中心人物へのインタビュー調査や、PBLを拡張しようとしている実践へのアクションリサーチなどを行い、実践研究を進めてきた。特に、「PBLの実行可能性」に関するアクションリサーチは、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、検討会の延期や授業実践の内容の変更など、想定外の事態も生じていたが、Zoomなどのweb会議システムを活用して検討会に参加したり、感染対策を行いながら授業観察を行ったりするなどして研究を遂行した。その成果として、①活動の土台となる《ルール》や《共同体》、《分業》などの影響に注視する必要性。②活動における《道具》がもつ「柔軟性」の視点。③「持続可能性」まで視野に入れて「実行可能性」を検討する必要性の3点を提示した。 また、「PBLの発展可能性」に関する研究においては、新型コロナウイルス感染症による影響で、PBLの実践大学に訪問することが困難な状況となったことなどから事例研究は困難であると判断し、文献研究に切り替えて研究を進めた。先駆的にPBLを実践している事例に関する文献を収集し、医療系分野を中心に展開されてきたProblem-Based Learningと、工学分野を中心に展開されてきProject-Based Learningの歴史的展開や、学習プロセスのモデルについて理論的に整理し、「PBLの学習サイクル」のモデルを提示した。
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