研究課題/領域番号 |
20J15532
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澁川 幸加 京都大学, 教育学研究科 教育学環専攻 連携教育学講座 高等教育学コース, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
|
キーワード | 反転授業 / 事前学習 / 授業設計 / 単位制度 / ブレンド型授業 / 高等教育 / 教育工学 |
研究実績の概要 |
2020年度は、事前学習と対面授業の関係を捉えるために先行研究の理論整理と、反転授業設計手法のプロトタイプの開発およびその効果検証などを行った。 まず理論研究では、反転授業の近接概念であるブレンド型授業や従来授業における事前学習との相違から反転授業の特徴を導出した。その結果、反転授業は対面授業時の学習活動の質を向上したり新たな学習活動を取り入れたりするために授業外学習の時間の使い方を変えることに重きを置いているが、ブレンド型授業は対面学習と個別学習の組み合わせとテクノロジーの使用に重きを置いているという相違を明らかにした。また、従来授業における予習とは異なり、反転授業における事前学習には教師による学習内容の解説と丹念な設計という要素が含まれることを明らかにした。 加えて理論研究では、ハイフレックス型授業やハイブリッド型授業など新たな授業形態と反転授業との概念整理を行った。その際、新たな授業形態の登場により授業時間と授業外学修時間が融解しつつある課題、遠隔授業と面接授業との区別が困難になっているという単位制度上の問題を指摘した。 次に開発研究では、形成的研究の方法論に基づき、事前学習と対面授業を有機的に連関させることを促す反転授業設計を支援するためのツールである「反転授業リデザインワークシート」を開発した。大学教員24名を対象に反転授業リデザインワークショップをオンラインで開催し、その形成的評価を行った。効果・効率・魅力の3観点に基づいた質問紙調査を行った結果、スモールステップな授業設計が可能、担当授業のふり返りや客観的な分析が可能、授業設計の効率化などの効果が認められた。また、反転授業を実践することへの動機づけや,ワークシートの利用価値に肯定的な評価が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究進捗は、理論研究と開発研究を進展させたと評価できる。まず理論研究では、先行研究では十分に検討されていなかったブレンド型授業や従来授業における予習と反転授業との違いを整理した論考をまとめ、『日本教育工学会誌』に採択された。また、反転授業と授業外学習の観点で接点をもつ単位制度を関係づけながら、コロナ禍で普及した新たな授業形態の概念整理と、単位制度における今日的な問題を整理した。これについても論文が『京都大学高等教育研究』に採択され、『大学マネジメント』に関連論考が掲載された。次に開発研究では、反転授業設計手法の開発と形成的評価を実施できた。この成果の一部は日本教育工学会全国大会にて報告した。加えて、アウトリーチ活動にも精力的に取り組んだ。以上を踏まえ、研究進捗がおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
開発研究では、まず、昨年度の形成的評価から得た知見をもとに修正事項を導出し、反映する。次に、修正した反転授業リデザインワークシートをもとに、新たに協力者を募り、2回目の反転授業設計ワークショップを開催する。これを開発評価の最終盤とする。 さらに、反転授業実践初心者の教員に協力を依頼し、反転授業リデザインワークシートをもとに設計した反転授業実践では、実際に意図したように学生の理解が深まるかを検証する。 これら研究知見をもとに、反転授業設計への示唆をまとめる予定である。
|