我々は、筋特異的にオートファジー基質の発現を欠損または増強したマウスを作成し、オートファジー基質が抗酸化物質の発現を調節することを確認した。一方、オートファジー基質は抗酸化機能の制御の他、タンパクの合成を制御する可能性も報告されているが、骨格筋における機能を詳細に検討した報告は無い。そこで本年度は、筋タンパクの分解や合成に対するオートファジー基質の役割を解明することを目的とした。これを解明するため、課題1として筋特異的にオートファジー基質の発現を欠損または増強したマウスのタンパクの分解と合成に関連するタンパクの発現を測定した。タンパクの分解は、複数のオートファジー関連因子の発現変動を測定し評価した。その結果、欠損マウスは野生型マウスと比べて測定した全ての因子の発現に有意な違いは無かった。また増強マウスは、野生型マウスと比べてLC3-Iが減少したが他の因子の発現に有意な違いは無かった。タンパクの合成は、複数のmTORの下流因子の発現変動を測定し評価した。その結果、野生型マウスと比べて欠損マウスおよび増強マウスともにこれらの因子の発現に有意な違いは無かった。さらに課題2として、作成したマウスと野生型マウスにデキサメサゾン投与による筋萎縮を誘導した。その結果、欠損マウスは野生型マウスと比べて筋重量が減少する傾向を示したが、増強マウスは野生型マウスと比べて筋重量に有意な違いは無かった。前述したように、オートファジー基質は骨格筋の抗酸化機能を制御することを明らかにしている。そこで、これらのマウスに酸化ストレスの増大が起因となる筋萎縮を誘導した。その結果、欠損マウスは野生型マウスと比べて筋萎縮が有意に悪化し、増強マウスは筋萎縮が有意に軽減した。これらの結果より、骨格筋のオートファジー基質は抗酸化機能を向上することで酸化ストレスを軽減し、筋萎縮を軽減する因子であることが示唆された。
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