研究課題/領域番号 |
20J15573
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
三ツ井 良輔 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | Saccharomyces cerevisiae / 植物二次代謝産物 / 代謝工学 / CRISPR-Cas |
研究実績の概要 |
植物二次代謝産物をより安価に大量生産するために、遺伝子組換え微生物を用いた異種生産研究が行われている。しかし、組換え微生物において、植物二次代謝産物は異種経路を含む非常に多段階の代謝反応を経て合成され、この代謝反応全体を最適化することは容易ではない。 本研究ではSaccharomyces cerevisiae (以下、酵母)における超多段階代謝反応を網羅的に改変するための、CRISPR-Casとカクテルδインテグレーションを組み合わせた代謝改変手法の開発と実施を行う。Artemisia annua由来の二次代謝産物であるアルテミシニン酸(以下、AA)をモデル物質として選定し、酵母細胞内のおよそ30段階の代謝反応を網羅的に改変し、組換え酵母による高効率な二次代謝産物生産の達成を目指す。 令和2年度は計画遂行に必要となる種々のDNA断片の設計と構築、スクリーニング条件の検討、およびAA生産酵母の作製とスクリーニングを実施した。AA生産酵母を作製する前に、AA合成と競合するエルゴステロール合成に関連する酵素遺伝子の転写量を銅イオンによって抑制できる組換え酵母を作製した。また、AA生産酵母の選抜の際に実施する薄層クロマトグラフィーの条件を検討し、AAとその中間体の分離および検出が可能な試薬組成を決定した。撮影した各スポットの発色強度を画像処理ソフトウェアにより数値化することで、AAの定量的な分析が可能であることを確認した。さらに、上記で作製した組換え酵母を代謝改変して得られた形質転換体を抽出培養し、TLCを実施してAA生産酵母をスクリーニングした。現在までに1000株以上の形質転換体を抽出培養し、およそ10 mg/L-抽出溶媒のAAの異種生産を達成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度に計画していた、研究遂行に必要となる種々のDNA断片の設計と作製、スクリーニング条件の検討、およびを酵母の代謝改変とスクリーニングを実施した。そして、作製した組換え酵母によるAAの異種生産に至っている。したがって、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
さらなるAA高生産組換え酵母の取得に向け、令和2年度に判明した細かな実験の条件を改善しつつスクリーニングを継続し、取得した組換え酵母の遺伝子破壊、培養条件の検討を行う。また、余裕があればAA以外の植物二次代謝産物の異種生産にも挑戦する。さらに、得られた成果は学術論文や学会発表で積極的に発信する。
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備考 |
本研究課題の手法に関連する学術論文が2020年度に受理された。しかし、実験と学術雑誌への投稿は当該年度以前に行ったものであり、特別研究員奨励費を使用した成果ではないため2020年度の研究成果には含めていない。
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