高い大気安全性とイオン伝導性を示すNa3SbS4結晶電解質の、中心元素であるSbの一部をMoに置換し、Na欠損組成であるNa3-xSb1-xMoxS4組成を作製することで、高い安全性を維持したまま、イオン伝導度が増加することを明らかにした。前年度に見出した世界最高値の導電率を示すNa3-xSb1-xWxS4結晶電解質と合わせて行った解析の結果から、高い導電率を有する原因が、正方晶を有する母結晶に対し、よりイオン伝導に適した立方晶構造を有すること、また前指数因子がより高い値を有することにあるとわかった。また、Na3PS4結晶電解質においても、中心元素であるPの一部をWに置換し、ナトリウム欠損を導入したNa3-xP1-xWxS4組成が母結晶よりも高い導電率を示すことを見出した。 加えて、自由体積を有し、高い成形性と導電率を示すガラス電解質について、平面三角形構造をもつBS33-を基本骨格とする硫化物ガラス電解質を開発した。固相合成およびメカノケミカル処理を用いた、ホウ素と硫黄の単体を出発原料としたNa3BS3ガラス電解質の作製が可能であることを見出した。Na3BS3ガラスの導電率は1.1×10-5 S cm-1であり、四面体構造であるPS34-を骨格とするNa3PS4ガラスの導電率よりも高い値を示すことを明らかにした。また、ガラスを熱処理することで析出した準安定結晶相が、安定相よりも高い導電率を示すことを見出した。 本年度の研究成果として、4報の学術研究論文発表(共著論文を含む)、1件の国内学会オーラル発表に加え、1件の国際学会ポスター発表を行った。さらに、これらの成果が認められ、大阪府立大学学長顕彰等を受賞した。
|