天然ゴム分解菌Rhizobacter gummiphilus NS21株は、細胞外でポリイソプレンをイソプレンオリゴマーへと低分子化して細胞内に取り込むことで代謝する。天然ゴム培養時のNS21株細胞を電子顕微鏡で観察した結果、細胞内にバイオプラスチックの一種であるポリヒドロキシアルカン酸を蓄積していることが判明した。そこで本株を利用することにより、天然ゴムを原料としたバイオプラスチック生産技術を構築することが可能であると考えた。NS21株が生産するポリヒドロキシアルカン酸をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ポリヒドロキシ酪酸 (PHB)であることが明らかとなった。またNS21株のゲノム中にポリヒドロキシ酪酸 (PHB)合成遺伝子群 (phaCAB)の存在を確認している。 NS21株のPHB生産系の効率化を目指して、培養条件の検討と本株の遺伝子改変を行なった。先行研究では、細胞の増殖に必要な窒素源量が不足すると、PHAの前駆体であるアセチルCoAがPHA合成経路へと分配されPHA合成が促進されることが示されている。そこで、NS21株培養時の窒素源を10%にした。その結果、NS21株においても、PHBの蓄積量が約4倍に向上することが明らかとなった。このことから、本株においても窒素減の制限によりアセチルCoAがPHB合成に利用されやすくなったと考えられる。 本株のゲノム解析により2つのPHB分解酵素遺伝子ホモログを同定している。そこで、PHB生産性の向上を目指して、相同組換え法によって両遺伝子ホモログの二重破壊株を作製した。得られた二重破壊株を天然ゴムで培養した際のPHB蓄積量を調べた結果、野生株の場合と比較して生産量が約5倍に向上することが示された。得られた破壊株ではPHB分解能が欠失したことで、細胞内で生産したPHBが分解されずPHB蓄積量が増大したと考えられる。
|