研究実績の概要 |
令和4年度は要約統計情報の知覚と注意との関連を検討した。 要約統計情報の知覚とは、観察者が物体群の任意特徴に関して平均などの要約統計量に相当する情報を得ることである。研究目標は、要約統計情報の推定における各項目への重みを求め、推定が項目への注意によって補正されるかを検証することであった。心理物理実験及び統計モデリングから以下の興味深い結果を得た。 心理物理実験では、複数の円形刺激を二次元提示し、観察者に円の平均サイズを推定させた。昨年度の実験より条件を増やし、同心円状縞模様6水準(空間周波数0.0625~2 cpd)を設けた。その結果、空間周波数が0.25~0.5 cpdの場合に他の模様条件より相対的に推定値が過小評価されたため、空間周波数に対して推定値はdipper functionになることが新たに明らかになった。 次に、1試行中の円形刺激の各々にどの程度重みづけがされていたのかを統計モデルより推定した。その結果、最も大きな円形刺激と中間ランクの大きさの円形刺激への重みが大きいことがわかった。既存の研究では、集合の中で顕著な項目への注意が促進され平均推定がその項目の値へバイアスされることが示されていた。また、近年の先行研究からは、集合の中で平均値に近い値を持つ項目(i.e., 集合の情報として信頼性が高い項目)への注意が促進され、外れ値に近い項目(i.e., 集合の情報として信頼性が低い項目)は過小評価される可能性が示唆されており、これはロバスト平均化と呼ばれていた。これまではこれらの知見が独立に議論されていたが、本研究結果は集合の顕著性及び信頼性に基づくバイアスが同時発生することを示唆するものであった。 以上より、本研究は、顕著性および信頼性など複数の尺度から項目への注意が促進され、また刺激の表面模様によっても集合の要約統計情報が補正される可能性を示す結果を得たといえる。
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