令和3年度(4-8月)では、以下2つのテーマの研究に関して論文の仕上げおよび英文学術誌への投稿を行った。 1点目は、東日本大震災を自然実験として、震災が子ども自身の認知能力に対する投資行動 (主に勉強時間)に与えた影響を推定する研究である。指導教官をPIとするプロジェクトメンバーの一員として、厚生労働省より提供を受けた21世紀出生児縦断調査を用いた研究である。具体的には東日本大震災の経験が子の投資行動にどのような影響を与えるかを検証した。自然災害、戦争といった外生的なショックにさらされたときに、親がどのように子どもに対する投資行動を変えるかという研究は多くあるものの、子ども自身の反応について分析した論文はほとんど存在しないことから、シンプルな経済学の理論モデルをもとに、理論面および実証面から分析を行った。 2点目は、学力における兄弟姉妹間の波及効果の推定に関する研究である。北海道伊達市より提供を受けた教育データ(市の公立小中学校に通学する子どものテストの成績や家計の情報を含む)を利用し、テスト成績で測られた学力において兄弟間の波及効果があるか、そしてあるとすればそれはどれほど大きいのかを検証した。(令和二年度末の研究実施状況より引用)。テストの成績といった情報と兄弟関係を同時に観察できるデータが少ないことから、本研究は社会科学分野においてもある程度の新規性を有しており、学術誌への投稿に向けた推敲作業を主に行った。 留学に伴い令和3年8月をもって、交付を辞退したものの、これらの研究については学術誌への掲載を目標に取り組んでいきたい。
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