研究課題/領域番号 |
20J20049
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大久保 祐里 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 硝酸トランスポーター / ホスファターゼ / リン酸化プロテオミクス / シロイヌナズナ / 窒素栄養 |
研究実績の概要 |
植物は土壌から窒素栄養として主に硝酸イオンを吸収しているが,自然界において土壌中の硝酸イオンは常に均一で十分に存在するわけではない.そのため植物は、根の一部が窒素欠乏を感知すると,他の根で相補的に多くの窒素栄養を取り込む仕組みを進化させてきた.本研究では,ペプチドホルモンCEPを介した全身的な窒素吸収の制御機構の解明を進め,植物の窒素恒常性維持の詳細な分子メカニズムを明らかにすることを目指している. 今年度は,葉から根に移行する窒素要求シグナルCEPD/CEPDLの下流で誘導される遺伝子群を改めて機能解析する中で,主要ターゲットであるNRT2.1と同程度に強く誘導されるホスファターゼCEPHに着目して研究を行なった.このホスファターゼは根の外皮や皮層の細胞質で主に発現し,窒素欠乏に陥るとCEPD/CEPDL依存的に発現量が増加することから,CEPD-induced phosphatase(CEPH)と命名した.解析を進めた結果,このホスファターゼは,硝酸トランスポーターNRT2.1の501番目のSerを脱リン酸化することが明らかとなった.NRT2.1のSer501は,リン酸化されると硝酸吸収活性がOFFになるnegative phospho-switchであることが知られていることから,CEPHはNRT2.1のSer501を脱リン酸化して,硝酸吸収活性をONにする働きをしていると結論づけた.植物は窒素欠乏に陥ると硝酸吸収を増加しようとするが,窒素欠乏時にはタンパク質の原料となる植物体内のアミノ酸貯蔵量は低下するため,NRT2.1を大量に新規合成する余裕はない.そこで植物は体内に窒素が豊富に存在するタイミングでNRT2.1を少し多めに合成し,Ser501のリン酸化で不活性型にしてストックする先行投資型システムを進化させたと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
植物が根の局所的な窒素欠乏を感知すると,葉で産生された窒素要求シグナルCEPD/CEPDL2が根へ移行して硝酸イオンの吸収を増大させることがこれまでに明らかになっているが,根に移行したCEPDが硝酸イオン吸収を活性化するメカニズムについてはまだ明らかとなっていない. 今回発見したホスファターゼCEPHは,植物の主要な硝酸トランスポーターNRT2.1を直接脱リン酸化して活性型へと切り替え,根における硝酸吸収を増大させる働きをしており,硝酸イオン吸収を活性化するメカニズムの全容解明へ大きく前進した.
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今後の研究の推進方策 |
硝酸トランスポーターNRT2.1の501番目のセリンをリン酸化し,硝酸吸収活性をOFFにするタンパク質リン酸化酵素はまだ同定されていないため,根に存在するリン酸化酵素群から候補因子の絞り込みを進めている.これらの遺伝子欠損株,および過剰発現株を作出し,硝酸吸収に影響が出るか解析を進めていく.
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