植物は土壌から窒素栄養として主に硝酸イオンを吸収しているが,自然界において土壌中の硝酸イオンは常に均一で十分に存在するわけではない.そのため植物は、根の一部が窒素欠乏を感知すると,他の根で相補的に多くの窒素栄養を取り込む仕組みを進化させてきた.本研究では,ペプチドホルモンCEPを介した全身的な窒素吸収の制御機構の解明を進め,植物の窒素恒常性維持の詳細な分子メカニズムを明らかにすることを目指している 前年度までに,硝酸トランスポーターNRT2.1の501番目のセリンを脱リン酸化するホスファターゼCEPHを同定し,CEPHによってNRT2.1の硝酸吸収活性がONになることが明らかとなった.そこで今年度は,501番目のセリンをリン酸化して硝酸吸収活性をOFFにするキナーゼの探索を行った.高窒素条件下では501番目のセリンのリン酸化レベルが上昇することに着目し,高窒素条件で発現量が誘導されるキナーゼをトランスクリプトーム解析によって探索した.その結果,発現誘導率の高いキナーゼ遺伝子TOP10の中に同じファミリーに属する2遺伝子が含まれていた.この2遺伝子について多重欠損株および過剰発現株の作出を進めており,これらの株を用いて硝酸吸収活性やNRT2.1のリン酸化レベルの検証を行う予定である.
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