研究課題
本研究では、強磁場環境を伴う中性子星の放射機構の解明を目指している。特に、降着駆動型中性子星に着目しており、重力エネルギーをX線として放射する「X線パルサー」に焦点を当てて研究を行ってきた。その中心的役割を果たしたのが、X線衛星NuSTARに採択されたX線パルサーCen X-3の観測提案であり、これまでの観測データと比べて広帯域かつ長時間の良質な観測データを得ることに成功した。4日間という本天体では過去最長のX線観測が2022年1月に行われ、本年度は主にその観測データ解析を行った。Cen X-3はX線パルサーの中でも非常に明るい光度を持つ。そのため、大統計を活かしたX線スペクトルの時間変動解析が可能である。X線スペクトル時間変動は、X線放射の異方性と強く結びついており、降着流および周辺物質の3次元物理描像を抽出するのに多大な役割を果たす。本研究では、Cen X-3の連星軌道位相および自転位相のスペクトル変動を詳細に解析し、その物理的起源を初めて明らかにした。軌道位相に伴うスペクトル変動は、安定した降着流からのX線放射と降着円盤からの熱的放射の2成分で説明することができ、その変動は伴星から放出される非一様な星風による遮蔽効果によるものであることが明らかになった。この結果は、これまで現象論的にしか理解されてこなかったスペクトル変動に初めて物理的説明を与えたものである。一方、自転位相に伴うスペクトル変動は、降着流の幾何学構造と強磁場中のプラズマのコンプトン散乱異方性に起因しており、その幾何学構造を制限することに成功した。モンテカルロシミュレーションを用いて降着流の物理現象を再現し、それを観測結果と比較するという独自の手法を採用しており、今後はHer X-1をはじめとする他のX線パルサーへの応用も期待できる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Astrophysical Journal
巻: 944 ページ: 9~9
10.3847/1538-4357/acadde