研究実績の概要 |
今年度も引き続きリチウム空気電池の新規電解液溶媒の開発に注力した研究を行ってきた。その中で、スルホンアミド官能基を有するN,N-ジメチルエタンスルホンアミド(DMESA)のLOB電解液溶媒としてのポテンシャルを評価したところ、DMESA電解液は高い酸化耐性と易分解性Li2O2の形成能という電池サイクル特性向上に重要な2つの要素を併せ持つことが明らかにされた。この特徴に基づき、充電過電圧が大幅に低下し、その結果としてサイクル特性が向上することが示された。スルホンアミド系分子のリチウム空気電池電解液としての適性は未だ十分に評価されていないものの、この分子を起点とする新規電解液の分子設計により更なる性能向上が見込まれる。また、今年度はリチウム空気電池の充電過電圧低減に向け、その反応機構を理解する目的に、これまで注力してきた気体生成物解析だけでなく固体生成物解析を実施した。これに関して、最先端の固体分析技術を有するドイツ・Justus-Liebig University Giessenへの海外渡航を行い、放電生成物であるLi2O2粒子及びLi2O2/電極界面、Li2O2/電解液界面被膜の詳細な分析も併せて行った。国内で実施したガス分析と、これらの固体分析手法で得られた結果を相補的に活用することにより、リチウム空気電池系全体の知見の体系化が見込まれる。
|