研究課題/領域番号 |
20J20108
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
後藤 遼太 東北大学, 環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 超高温地熱資源 / 水圧破砕法 / 花崗岩 / 地熱貯留層 |
研究実績の概要 |
2021年度においては、超高温・高応力下でのボアホールの安定性に関する知見獲得を目的とした実験を実施した。実験の結果、超高温地熱環境では、在来型地熱環境とは異なる破壊条件、破壊挙動でボアホール壁面に破壊が発生することが明らかになったものの、破壊の発生した応力状態は既知の破壊基準と整合的であり、掘削作業を著しく遅延させるような破局的な崩壊は発生しないと考えられる。本研究の成果は、超臨界地熱資源開発における坑井掘削プロセスにおける基礎的知見を提供し、超臨界地熱資源開発の実現可能性に寄与すると考えられる。 2022年度においては、貯留層造成後の地熱生産プロセスにおいて検討が必要であると考えられる、地熱抽出(冷却)に起因する、貯留層の水理特性変化や破壊に関する実験的研究に着手することを計画した。この研究は、超臨界地熱資源開発プロセスの中でこれまで検討を行ってきた、坑井掘削、水圧破砕法などによる貯留層造成に次ぐ、地熱発電システムの運用段階で検討が必要であると考えられる。既往研究に基づくと、地熱抽出を目的として、高温岩石内のき裂に冷水を注入すると、き裂面が冷却されることで熱応力が作用し、き裂の透水性が変化することが、シミュレーション研究などによって示されている。特に、本研究で対象としている超高温地熱環境では、既往研究で対象とされてきた在来型地熱環境よりも大きな温度低下が起きることでき裂面でのせん断滑り、即ち誘発地震の発生リスクが高い可能性を指摘する研究も報告されていることから、本研究成果の工学的を達成する上で、超高温地熱環境での貯留層の冷水注入に対する力学・水理学的応答は検討する必要があると言える。すでに予備実験を実施し、予備実験の結果と文献調査に基づき研究計画を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度においては、共同研究者の提案に応じる形で、超高温下での孔壁安定性に関する実験的研究を実施した。これは、当初の計画では含まれていなかったものであるものの、本研究計画が掲げている目標である、超高温地熱資源掘削に関する基礎的知見の提供という目標に資する研究であると考えられることから、実施することを決定した。研究の結果、超高温下でも孔壁の安定性が著しく損なわれることは無いと考えられる結果を得た。一方、当初計画で予定していた、超高温地熱資源開発への応用できるシミュレーターの開発という観点においては、コロナ禍などの影響によってシミュレーション研究についての知見を提供することを予定していた共同研究者と十分な議論をする機会を得ることが出来ず、計画していたような進捗を得ることが難しかった。2022年度においてもコロナ禍などにより国をまたいだ往来に関して見通しが不明であることから今後は、貯留層造成後の、地熱システム運用時における貯留層の力学・水理学的応答に関して、実験による検討に注力することを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
上述した通り、2022年度においても国際的な往来に関して先行きが不透明であることから、研究計画で予定していた研究する事項について、実験を通じた検討に注力する予定である。一方、最終的な目標であるシミュレーション研究によるフィールド規模での地熱生産予測を達成するために、主に国内研究者と積極的に情報交換することを予定している。
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