2022年度においては、本研究の目的として掲げている、水圧破砕によって造成されたき裂ネットワークを実際に地熱資源の利用に充てた際に予期される、抽熱によって生じるき裂面での熱収縮とそれによって発生すると考えられる、き裂透水性の向上や誘発地震発生リスクの増加に関する研究を行った。 既往研究によると、温度300℃程度までの地熱環境におけるフィールド実験では、冷水を注入することで地熱貯留層への、抽熱媒体である水の圧入性が良くなったことが報告されている。また、温度300℃程度から400℃を超える条件で、シミュレーションによって、冷水注入による貯留層水理特性の変化や、誘発地震発生リスクの増減に関する研究はこれまでに実施されてきている。しかしながら、超高温の岩石サンプルを注水によって冷却し、この時の水理特性の変化を実験によって確かめた研究は皆無である。 本研究では、このような背景から、超高温下での岩石に冷水注入をすることで生じうるき裂水理特性変化などに関する実験的研究を行った。具体的には、き裂を有する岩石サンプルを400℃・真三軸応力下におき、所定の流量で注水を行った。実験の結果、岩石サンプルが強く冷却されるほどき裂透水性が増加することが示唆された。一方で、冷却度合いが強いケースでも誘発地震発生リスクが顕著に増加することを示す結果は得られなかった。この結果から、本研究課題で提案している超高温水圧破砕と、それによって造成されると考えられる、微小き裂ネットワークが地熱資源生産に有用であることが示された。本研究の成果は査読付き論文として"Geothermal Energy"誌に投稿し、受理された。
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