研究実績の概要 |
最終年度である本年度は,前年度までに実施した解析・実験において得られたデータの分析を進め,適切な損傷領域の検知結果が得られるモデルの構築条件および撮影条件の抽出ならびにこれらの診断精度に与える影響を評価し,これらを撮影マニュアルの策定に資する情報としてまとめた。 はじめに画素分解能・照度に着目し,これらを考慮した学習用画像データベースの構築,検証用画像の取得ならびに画像診断精度の算定を実施した。その結果,目視計測と同等以上の精度で診断結果を得るためには,学習用画像データベースの画素分解能と検証用画像の画素分解能が同程度となる場合を必要条件に高精度の検知結果が得られることを示した。加えて,照度50lx~90,000lxにおいて,適切な検知結果が得られる露出設定(ISO感度とシャッタースピード)の組み合わせを定量的に示した。また,スマートフォンに内蔵されるオート露出機能により適切な露出設定が自動的に選択されることを示した。これらの必要条件を満足する撮影条件下で,外観のひび割れ水平長さ計測および内観のひび割れ長さ計測には画素分解能が0.3mm/px以下,内観のひび割れ幅計測には,画素分解能が0.1mm/px以下となることが条件となることを示した。 また,仕上げ材に生じた損傷状況から躯体の経験最大変形角を推定するにあたり,上記の撮影条件を満たした上で,内装仕上げ材の画像診断結果(ひび割れ長さとひび割れ幅の計測結果)を活用することで,最大経験変形が1/60rad.を超えるか否かの簡易的判断に活用可能なことを示した。 令和2年度~4年度の研究実績を統括して,最終的にこれまでの被害程度を大別する(全壊かその他)画像分類手法とは異なる定量的損傷評価が可能な画像診断手法を確立することができた。
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