ラジオフォトルミネッセンス (RPL) 現象を動作原理とする積算型線量計は様々な用途・分野で利用されており、当該線量計の素子である銀添加リン酸塩ガラス (PG:Ag) におけるRPL特性や、RPLの発光(RPL中心) 形成機構の探究がなされてきた。しかしながら、PG:AgにおけるRPLに係る未解明事象が数多く残存しており、RPL線量計材料の改良・新規開発の障壁となっている。本研究は、PG:AgにおけるRPLに係る未解明事象の解明を通じたRPL線量計材料設計指針の確立を目的としている。本年度は、未解明事象の一つである、PG:AgにおけるRPL中心である2価の銀イオン (Ag2+) 及び銀クラスター (Ag-cl) 形成量の組成依存性に着目し、解析を行った。 まず、PG:Agを構成するアルカリ金属と、RPL中心形成量との相関を調査した。Ag2+及びAg-cl形成量はそれぞれ含有カチオンがNa > Li > K > Rb > Cs及びNa > K > Rb > Csの順に多くなることが示された。この大小関係は概ねアルカリ金属とAg+とのイオン半径差順であり、1価の金属であるAg+をアルカリ金属と見做して、2種アルカリ金属のイオン半径差順に依って金属イオンの移動度が変化する現象である混合アルカリ効果に着目した。Ag+とのイオン半径差が小さい、即ち銀イオンの移動度が高いガラスにおいてRPL中心が形成されやすいことが示唆された。 次に、市販品と同じアルカリ金属であるNaを含有したPG:Agについて、RPL中心形成量の銀濃度依存性を調査した。その結果、銀濃度が高い試料においてRPL中心が形成されやすいことが示された。アルカリ金属依存性と同様に、銀イオンの移動度に着目すると、銀濃度が高いほど銀イオンの移動度も高くなることが予想されるため、銀イオンの移動度とRPL中心形成量との相関が示唆された。
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