研究実績の概要 |
光子を用いた大規模な量子情報処理に向けて以下の研究を行った。 (1)これまで行ってきた周波数多重化偏光エンタングル光子対の生成と、それに波長分割多重(WDM)を組み合わせたエンタングルメント配送の研究成果を論文にまとめて出版した。(Sci Rep 12, 8964 (2022), Opt. Express 30, 36711-36716 (2022))。これによって、従来の方法と比べて、高効率かつ高多重度な周波数多重化エンタングルメント配送が実証された。 (2)単一光子周波数コムを量子ビットとして用いるエンコード方法をさらに理論的に拡張し、具体的な量子計算プロトコルを提案した。このプロトコルでは、状態生成器に加えて、時間分解検出器、ビームスプリッター、光インターリーバーというパッシブな素子のみを用いてユニバーサルな量子計算が可能であり、エラーが生じにくく比較的実装が容易なプロトコルであると考えられる。さらに、状態生成の具体的な実験セットアップを提案し、エラー率を抑えるために必要な実験パラメータを導出することで、現在の実験技術でほぼ到達可能な範囲にあることを示した。この内容を論文にまとめて出版した(arXiv:2301.03188, accepted in Phys. Rev. Lett.)。 (3)光子を用いた量子情報処理に不可欠な線形光学回路を解析するための新たな理論手法を提案した。さらに、この理論手法に基づき、エンタングルしていない光子を補助的に用いた場合の線形光学回路によるベル測定について解析を行った。結果として、同様のセットアップで最大の成功確率を導出し、さらにその漸近的な振る舞いを解析的に導出した。これらを論文にまとめて、現在投稿中である(arXiv:2301.06551)。この理論手法によって、線形光学回路を用いた量子情報処理の可能性がさらに広がることが期待できる。
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