研究課題
N結合型糖鎖(N-グリカン)は,タンパク質のアスパラギン側鎖に結合した翻訳後修飾糖鎖で,多くの生物に普遍的に存在し,様々な生命現象に関与する.本研究では,超好熱性古細菌 Thermococcus kodakarensisに着目し,そのN-グリカンの耐熱性への寄与を合成化学的なアプローチによって迫ることを目的とした.昨年度までに,合成N-グリカンを用いた構造解析の結果から,T. kodakarensisのN-グリカンの構成糖であるmyo-イノシトールリン酸の立体化学がL-myo-イノシトール-1-リン酸であることが示唆された.本年度は,L-myo-イノシトール-1-リン酸を有するN-グリカンを合成を達成した.さらに,NMR解析により,この合成糖鎖が単離糖鎖と良い相同性を示し,myo-イノシトール-1-リン酸の立体化学をL-myo-イノシトール-1-リン酸と確定した.本研究はT. kodakarensisのN-グリカンを天然構造に限らず,非天然構造,標識糖鎖の合成を供給できるため,糖鎖の耐熱性への寄与を,糖鎖構造に基づいて解析することを可能とする.糖鎖の機能を解析するためには,タンパク質との複合化が鍵となる.本研究では,T. kodakarensisの糖鎖生合成経路に着目し,合成糖鎖を代謝的に取り込ませることで生体内で糖鎖とタンパク質との複合化を計画した.ドリコールリン酸GalNAcはN-グリカンの生合成初期段階の中間体であり,N-アセチル部分へアジド基を導入することでプローブ化した生合成中間体を設計した.その合成では,亜リン酸化GalNに対し,ドリコールとのカップリング後,アジド基を導入し,達成した.本プローブ化糖脂質は,生細胞へ代謝的に取り込ませることでN-グリカンの生合成へ干渉し,合成糖鎖のタンパク質への付加を可能とする.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Angewandte Chemie International Edition
巻: 62 ページ: e202218655
10.1002/anie.202218655.
Chemistry - A European Journal
巻: 28 ページ: e202201848
10.1002/chem.202201848.