研究課題
T細胞は病原体排除の中核を担うリンパ球であるが、時として同細胞が自己組織に対し過剰応答し、自己免疫疾患を惹起することがある。近年の研究により、このようなT細胞依存的自己免疫疾患の発症には、T細胞内代謝バランスの破綻が関与することが明らかとなってきた。一方、最近の研究により、Cysteinyl tRNA synthetase 2 (CARS2)を介した「活性イオウ代謝」が哺乳類細胞において新たに発見され、エネルギー産生、タンパク質のイオウ修飾などの生理機能を担うことが実証された。免疫細胞における活性イオウ代謝の役割は明らかになっていことから、本研究では、Cars2半欠損マウスを用い、腸管局在性CD4(+)T細胞における活性イオウ代謝の機能解析を行った。その結果、CARS2は大腸に集簇するCD4(+)T細胞の恒常的な増殖を抑制することで、大腸炎の発症に対し保護的に作用していること、外因性の活性イオウ分子の投与により、腸炎症状が改善することが示された。また、公共データベースの再解析から、腸管局在性ヒトCD4(+)T細胞におけるCARS2の発現低下がクローン病発症と相関することが明らかとなり、in vitroの実験により、活性イオウ分子がヒトT細胞の細胞増殖に対して抑制的に作用するとの知見を得た。以上より、CARS2依存的な活性イオウ代謝が腸管局在性CD4(+)T細胞の異常増殖を抑制することで恒常性維持に働くこと、同代謝経路の機能低下がマウスおよびヒトにおける腸管炎症に関与することを示唆する所見が得られた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Frontiers in Immunology
巻: 13 ページ: 870542
10.3389/fimmu.2022.870542