研究実績の概要 |
本研究では、比熱や電気抵抗などの物性測定やX線回折測定などからA3Co4Sn13の構造相転移と超伝導との関連を明らかにし、量子臨界点近傍での特異な挙動を見出すこと、およびそれらと線形磁気抵抗効果との関連やそれに付随する特異な現象の解明を目指していた。本年度は磁気抵抗測定に使用する磁場発生装置が故障のため使用できなかったが、DFT計算によりLa3Co4Sn13のディラック的な分散関係を有するバンドが主としてCoの3d軌道に由来していることが明らかとなった。A3Co4Sn13と同じ結晶構造を有するLa3Rh4Sn13が従来型の磁気抵抗を示すことも鑑みると、A3Co4Sn13の線形磁気抵抗がCo3d軌道に由来するディラックバンドに起因したトポロジカル物性であることが示唆される。 関連物質として単結晶合成を行っていたSrCo2(Ge1-xPx)2については、組成変化に伴う結晶構造の変化と磁気相の変化が密接に関わっており、隣接CoX(X=Ge, P)層間のX-X化学結合のランダムネスに起因して2つの強磁性量子臨界点が出現していることが見出された。また31P-NMR測定の結果から、幅広いP置換率の領域で強磁性揺らぎが支配的となっており、揺らぎのエネルギーの組成依存性が小さいことが明らかとなった。 さらに、量子臨界近傍のCo化合物であるRCo9Si4(R=Y, La)について59Co-NMR測定とそのデータ解析を行い、両物質の基底状態の差異(R=Y:強磁性, R=La:強磁性近傍金属)が磁気揺らぎのエネルギースケールの差に起因していることが示唆された。
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