研究課題/領域番号 |
20J20381
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原田 健志 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | ハイパー核 / マルチストレンジネス / J-PARC / 精密分光 |
研究実績の概要 |
本年度は、アクティブファイバー標的(AFT)の実機製作に向けた解析と散乱粒子用磁気スペクトロメータ"S-2S"設置の計画検討を行った。 J-PARC E70実験で使用する標的は約1000本の3mm径シンチレーションファイバーから構成される。2019年度には実機の1/3である約300本のシンチレーションファイバーを用いて試作機を製作し、東北大学電子光理学研究センターにてマルチファイバー性能試験を実施した。本年度はこの試験で得られたデータを元に解析を行った。その結果、試験で使用した運動量800MeV/cの陽電子が、AFTで使用するシンチレーションファイバーを通過した際には、平均して36個の光子を検出できていることがわかった。この数は、2017年度に実施したAFTの原理実証試験で得られている光子数と概ね一致し、試作機が実用レベルを満たす水準で機能していることを確認できた。 本年度の末には、AFTの信号読み出しに使用するVME-EASIROCモジュールの性能検討を行い、高い入射ビーム計数率下では各イベントに対応する波形の歪みが生じ、結果としてAFTで測定できるエネルギー分解能が悪化する可能性を発見した。入射ビーム計数率の低下は、最終的に得られるグザイハイパー核の収量低下につながるため、現在は、時間情報を使用した波形補正方法の確立と評価を進めている。 S-2Sは、四重極電磁石2台(Q1, 2)と偏向電磁石1台(D1)からなる電磁石系であり、これまでのグザイハイパー核分光実験で使用されいているいずれの電磁石にも勝る運動量分解能を有する。来年度の末には、J-PARC K1.8実験エリアに設置する計画であり、本年度は現在の保管場所であるKEKつくば地区にてS-2Sの視察を行い、けがき線の確認や設置に必要な事項の検討・確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
J-PARC E70実験は2022年度末の実施を予定している。これに向けて、本実験の要である磁気スペクトロメータS-2SのJ-PARC K1.8実験エリアへの設置を来年度末に完遂するべく、その準備作業を順調に進めている。また、アクティブファイバー標的の実機製作に向けた解析および開発に着手しており、これまでの性能評価試験を元に改善すべき点の洗い出しやその改良を進めているところである。来年度中には実機が完成すると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
J-PARC E70実験の2022年度実施のため、S-2SのJ-PARC K1.8実験エリアへの設置計画の検討を行う。この計画のもと、2021年度中に設置を完遂する。また、アクティブファイバー標的で使用する読み出しモジュールの波形整形に起因するエネルギー分解能の悪化を改善し、実機製作を進める。これと並行して、既に準備を終えているその他粒子検出器及びドリフトチェンバーの組み上げと運転試験を実施する。
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