研究課題/領域番号 |
20J20415
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
平良 尚梧 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | リグニン / リチウムイオン電池 / セパレータ / ゲル |
研究実績の概要 |
本研究では、リグニンを原料とした蓄電デバイス用セパレータの開発に取り組んでいる。その中でも、電解液を含有したゲルをセパレータとする、より安全性が高いとされるゲル状セパレータ、いわゆるゲル電解質の調製を意図している。昨年度までに、酢酸リグニン系ゲルが、リチウムイオン電池用電解液を良好に保持し、高いイオン伝導度を示すことが明らかになっていたため、当該年度は、正極と負極とともに実際に電池を組み立て、電池全体の性能評価を行った。代表的な負極材料であるグラファイトと組み合わせるため、電解液の有機溶媒を炭酸プロピレンから炭酸エチレンと炭酸ジメチルの混合溶媒に変更した。溶媒を変更した後もリグニンゲルは比較的高い電解液保持性を示したため、電気化学セルを組み立て、充放電特性、並びに抵抗値を測定した。リグニンゲル表面の電解液を完全に拭取ると、ゲルと電極界面の抵抗が極めて大きかったが、ゲル表面の電解液を残存させることで、界面抵抗を低減することに成功した。さらに、充放電試験から求めた放電容量は、ポリエチレンセパレータに匹敵する高い値を示した。この結果から、リグニンゲルの、リチウムイオン電池用セパレータとしての利用可能性が示されたと考えている。この成果を第72回日本木材学会大会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の当初の目標は、液状の電解液を完全に内包したセパレータとすることであったが、現状ではゲル表面に電解液を残存させることが必要となっているため。しかし、現状でも、通常のリチウムイオン電池としての機能は発揮していることから、セパレータとしての可能性が示されている。総合的に、研究計画通りではないが、ある程度の進展があったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、リグニン系セパレータと電極との相性を更に良好にするため、電解液、支持電解質、電極活物質の種類をさらに検討する。加えて、より安全性の高いリチウムイオン電池の材料をリグニン由来とすることを目指して、電解液を不揮発性・難燃性のイオン液体としたリグニンゲルを調製し、電気化学的性能の評価を行う。
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