令和4年度は,既に樹立しているpTreg発生の実験系(遺伝子改変マウスと改変給餌; DO11.10/Rag2KO/Foxp3-eGFPマウスおよび卵白粉末添加飼料)を発展させ,生理学的条件に近いpTregの発生および機能の解析を目的とした。本実験系に用いているマウスは遺伝子変異により胸腺由来TregおよびB細胞を欠くため,(1)胸腺欠損マウスであるヌードマウスと本遺伝子改変マウス由来のナイーブT細胞を使用した実験系と(2)遺伝子改変マウスに野生型nTregを移入した実験系を用いて,より解決課題に直線的なアプローチを選択することとした。(1)ナイーブT細胞移入後4週間後にマウスを解析したところ,抗原非存在下すなわち通常給餌条件下ではpTreg発生は見られない一方で,抗原刺激存在下では末梢組織においてpTregの存在が認められた。このことから,pTreg発生は胸腺非依存的に生じる現象であることを示した。(2)野生型nTregを移入したマウスでは,抗原刺激存在下においてpTreg発生を抑制することが明らかになった。このことから,野生型nTregはpTreg発生も含むT細胞の活性化を広範囲に抑制することが明らかとなり,昨年度実施した骨髄キメラマウスの結果を支持するデータを得た。pTregの機能解析を目的として,Tape-stripping + papain + OVAを用いてマウス耳介におけるdelayed-type hypersensitivityを評価した。その結果,餌を介した抗原刺激によってpTregを発生させた群では炎症状態は誘導されず,炎症性サイトカイン産生T細胞の分化が抑制されていることが明らかになった。これは,pTregが経口免疫寛容の成立に寄与していることを支持する結果である。
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