研究実績の概要 |
「一つひとつの瞬間にあるがままの注意を向ける」(Kabat-Zinn, 1990)ことを基本とするマインドフルネスは,注意の向上など,ADHDの特徴に効果があることがわかっている(e.g., Jha et al., 2007)。一方で,同じくADHDの特徴である多動・衝動性は,マインドフルネスへの取り組みを阻害する可能性がある。そこで,そのような人も取り組みやすく,またそうでない人にとってもより取り組みやすい実践を,身体姿勢の工夫という観点から検討することを目的としてきた。ADHDには,多動・衝動性の他にも,即時的な報酬を求める遅延嫌悪という特徴があり,すぐには達成できないマインドフルネスへの取り組みを阻害する可能性がある。 そこで,課題に粘り強く取り組みやすい背筋を伸ばした椅坐位(直立椅坐位)での実践が,瞑想実践への時間的に長い取り組みにつながるかを,ADHD傾向を加味して検討するべく,スクリーニング調査をおこなった。成人期ADHD検査(福西,2016)を用いて大学生128名をスクリーニングしたところ,参加者は,不注意傾向では低群31名,中群52名,高群32名に群分けされた。また,多動・衝動性傾向では低群34名,中群50名,高群31名に群分けされた。この群分けに従い,2022年度分の実験に臨んだ。 不注意や多動・衝動性によるマインドフルネスへの取り組みにくさは,臨床現場でADHD者へのマインドフルネスベースの治療をおこなう際の妨げになる。よって,身体姿勢という簡便なアプローチにより取り組みにくさを低減することは,アドヒアランス向上を目指すにあたって重要な試みである。
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