研究課題/領域番号 |
20J20445
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
LI SIHAN 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 翻訳品質管理 / リボソーム停滞 / リボソーム分解 |
研究実績の概要 |
18SリボソームRNA(rRNA)の変異により遺伝暗号を解読する活性を失ったリボソームは、出芽酵母において18S NRDと呼ばれる機構によって認識・分解される。本研究は18S NRDの分子機構および生理的意義の解明を目的とする。一年目では、不活性型18S rRNAを保持するリボソームが翻訳開始コドンで単独に停滞し、Mag2およびSmu1(仮称)により認識され分解へと導かれることを見いだした。二年目では18S NRDの一般性と哺乳類における保存性の検証を目指し、以下の研究を実施した。 1) Mag2, Smu1による停滞認識の仕組みを解析した。Mag2、Smu1が結合したリボソームの特徴を調べた結果、Mag2が翻訳速度の低下を全般的に認識する一方、Smu1が翻訳中に隣接したリボソームが存在しない単独のリボソームに特異性を持つことが示唆された。ミュンヘン大学との共同研究で行われた構造解析よりSmu1とリボソームとの結合の仕様がわかり、Smu1が単独のリボソーム停滞の感知に中心的な役割を果たすことが明らかになった。 2)内在性の18S NRD基質の探索を行った。DNA・RNAに架橋するシスプラチンを用いて内在性の18S rRNAの変異・損傷を誘導後、18S NRDを遮断した細胞において特定の不活性型18S rRNAの蓄積が見られた。また、本来活性を持っているリボソームもストレス下において停滞することがあるため、ストレスによる18S NRD経路の活性化状況を酵母およびヒト培養細胞で評価した。18S NRDを惹起するリボソームユビキチン化が亢進するストレス条件を複数同定でき、この際のユビキチン化への18S NRD因子の関与を確認した。18S NRDは細胞内で産生される不活性型リボソームを除去し、さらにストレス下に翻訳異常を解消することで恒常性の維持に寄与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一年目、二年目の研究内容として計画していた18S NRDにおける不活性型リボソームを認識する機構の解析、18S NRDの新規な基質の探索について概ね遂行した。二年目から実施予定であった不活性型リボソームのサブユニット解離の試験管内再構築には取り掛かっていないが、三年目以降の計画であったストレスに起因する翻訳異常とリボソーム分解系の誘導との関連の確認、および当初予定していなかった哺乳類培養細胞を用いた18S NRDの保存性の検証が進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
レポーターから発現させた不活性型18S rRNAに起因するリボソーム分解系18S NRDにおける基質認識およびリボソームユビキチン化の仕組みについて、前年度までの研究成果を取りまとめ論文投稿を行う。多様なストレスに引き起こされる内在性(活性型)リボソームのユビキチン化の亢進およびその機能に関する研究を継続し、ストレスによる翻訳異常の正体と原因を同定する。また、この際のユビキチン化の機序についてリボソーム自身の異常に起因するリボソームユビキチン化との比較検討を行う。さらに、ストレス時のリボソームユビキチン化が既知の18S NRD経路と同様に最終的にリボソームの分解・排除を惹起するかを出芽酵母および哺乳類培養細胞を用いて検証する。 以上の解析が完了し次第、18S NRDにおけるユビキチン化に依存したリボソームサブユニット解離の試験管内再構築を試みる予定である。
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備考 |
研究成果は未公開のため、学会発表標題中の因子名は仮称である。
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