研究課題
細胞内でリボソームがmRNA上のコドンを解読しタンパク質を合成する翻訳活動を担う。コドン解読活性を持たない機能欠損リボソームは、出芽酵母において18S Nonfunctional rRNA Decay (NRD)と呼ばれる機構によって分解・除去される。しかし、機能欠損リボソームに起因する翻訳異常の実体、およびそれが認識される分子機構は明らかとされていなかった。本研究は18S NRDの分子機構および生理的意義の解明を目的とした。一年目、二年目では、変異型18S rRNAである18S: A1755Cを保持する機能欠損リボソームが翻訳開始コドンで停滞すること、E3ユビキチンリガーゼMag2およびFap1によるリボソームタンパク質uS3の二段階のユビキチン化が18S NRDの惹起に必須であることを明らかにした。三年目は、リボソーム停滞と18S NRDの誘導との関連を調べるため、Mag2とFap1の基質特異性に着目して解析した。その結果、Mag2が翻訳速度の遅いリボソームを全般的に認識する可能性が示唆された一方、Fap1が単独のリボソームに特化した停滞感知因子であることを見出した。また、翻訳停滞に起因するリボソーム分解系の一般性を出芽酵母およびヒト培養細胞で検証した結果、異なる機序で翻訳を阻害する複数の薬剤が18S NRDの引き金であるuS3のユビキチン化を亢進させ、リボソーム小サブユニットの分解を引き起こすことが示唆された。本研究で解明した18S NRDの分子機構は、哺乳類における研究の基盤となり、リボソームの異常が原因となるリボソーム病の発症機序の解明、および薬剤投与がもたらすリボソームへの影響と副作用との関連等の理解につながると期待される。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Molecular Cell
巻: 82(18) ページ: 3424-3437
10.1016/j.molcel.2022.08.018
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00197.html