研究実績の概要 |
申請者は、有機金属試薬及び遷移金属触媒を使用せず、反応系からの除去が容易な有機塩基を用いる新たな有機半導体高分子の精密合成手法開発及び、その高機能性半導体材料への応用を目指し検討を行っている。本年度、[1] 新規モノマーの合成及び、有機塩基を用いる重合検討、[2] 環境調和型重合手法を用いて合成したポリチエニレンビニレン種 (PTV) の熱電変換材料への応用を行った。 [1] 新規モノマーの合成及び、有機塩基を用いる重合検討 有機塩基による重合検討を行うために、同一チオフェン環にシアノメチレン基、ホルミル基、アルキル基を導入した新規モノマーの設計及び合成を行った。得られたモノマーについて種々の有機塩基を用いる重合検討を行った。その結果、塩基としてDBUを用いた際に最もよく重合反応が進行し、数平均分子量(Mn)2,700、分子量分布値3.17を有するポリマーの合成に成功した。 [2] 環境調和型重合手法を用いて合成したポリチエニレンビニレン種の熱電変換材料への応用 遷移金属触媒及びハロゲン原子を使用しない Horner-Wadsworth-Emmons 重縮合法を用いて、チオフェン環の 3 位及び 4 位に 2-(エチルヘキシル) 基を導入したポリ(3,4-ジ(2-エチルヘキシル)チエニレンビニレン) (P3,4EHTV) の合成に成功した。P3,4EHTV は溶解性が高く、Mn = 31,000 のポリマーがヘキサンに対して完全溶解した。また、得られたP3,4EHTV を熱電変換材料に応用し、その性能を先行研究で合成されたポリ(3(2-エチルヘキシル)チエニレンビニレン) (P3EHTV) と比較した。その結果、P3,4EHTV は、先行研究で合成された P3EHTV よりも高いパワーファクター (PF) = 2.66 μW m-1 K-2 を示した。
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