研究課題
これまで高効率(>30%)な太陽電池は、III-V族化合物半導体とその多接合化によって達成されてきた。一方、軽くて柔らかいプラスチックを基板としたフレキシブル太陽電池は、効率で劣るものの汎用性は高い。もしIII-V族化合物をプラスチック上に形成できれば、優れた効率と汎用性をあわせもつ革新太陽電池が実現する。本研究では、「プラスチック上モノライクGaAs膜」の結晶成長・デバイス化技術を構築し、転写レス・フレキシブル太陽電池として最高の変換効率を実証することを目指す。本研究で提案するIII-V族化合物半導体をベースとした多結晶薄膜太陽電池は、結晶粒径と光学特性の相関に関する理論的研究により、そのポテンシャルの高さが示されてきた。しかし、非晶質基板上のGaAs膜の粒径制御技術は確立されておらず、実験的に体系化された例はなかった。今年度は、当研究室のシーズ技術である「固相成長法」および「Al誘起層交換法」により形成したGe薄膜をシードとすることで、ガラス上GaAs膜の結晶粒径を制御し、分光感度と結晶粒径の相関を明らかにすることを検討した。その結果、ガラス上に広い範囲でGaAs結晶粒径の制御(1-330 μm)に成功した。分光感度を結晶粒径の関数として整理したところ、分光感度は結晶粒径の増大に伴い向上し、粒径330 μmにおいてガラス上合成したGaAs膜の最高値(3.0 AW^-1)を達成した。多結晶GaAs薄膜における結晶粒径と光学特性の相関を初めて実験的に明らかにし、単結晶GaAsに匹敵する分光感度をもつ擬似単結晶GaAs膜をガラス上合成した。さらに、これまでの知見を基にGaAs薄膜のプラスチック上合成を検討した。堆積後の試料はプラスチック特有の柔軟性を有し、プラスチック上合成したGaAs膜において分光感度の初実証に成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度(1年目)は当初計画(層交換Geのプラスチック上合成)の達成に加え、2年目に行う予定であったプラスチック上GaAs薄膜における分光感度の初実証に成功した。
1年目までにプラスチック上GaAs薄膜における分光感度の初実証に成功した。そこで、2年目には、プラスチック上GaAs薄膜にPN接合を形成し、変換効率の実証を行うことを目指す。比較のため、石英ガラス、Ge、およびGaAs基板を併せてプロセスに組込むことでプロセスチェックを随時行い、課題を迅速に顕在化する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)
Materials Science in Semiconductor Processing
巻: 124 ページ: 105623-105623
10.1016/j.mssp.2020.105623