高効率フレキシブル多接合薄膜太陽電池の創出を目指し、最終年度となる本年度は、主に以下の課題に取り組んだ。 (i) InGaAs膜のガラス上合成および近赤外分光感度の実証 太陽光発電ロードマップでは、「汎用基板上における赤外光吸収層の開発」が重要課題として挙げられている。赤外光吸収材料を絶縁基板上に合成する研究は古くから行われてきたが、小粒径な多結晶膜であることに起因し、分光感度が得られた例はなかった。InGaAsは、その組成変調により、赤外光の吸収が可能な材料である。そこで、我々の得意とする「層交換Geシード技術」をInGaAs膜に応用することで、近赤外領域における分光感度の発現を目指した。その結果、ガラス上合成したInGaAs膜として最大粒径(>300 μm)を獲得すると共に、In組成比の増加に伴う分光感度吸収端の遷移が確認された。絶縁基板上の合成膜で近赤外領域の分光感度特性を実証した初めての成果である。 (ii) GaAsおよびInGaAs薄膜のプラスチック上合成 上記の成果に加え、我々は、フレキシブル薄膜太陽電池に向けたプラスチック基板上InGaAs薄膜の合成を検討した。基板の歪みはGeシード層の結晶成長を阻害したが、Ge成長条件の変調により100 μmに及ぶ結晶粒径を得ることに成功した。本Ge層をシードとして500℃でInGaAs膜をエピタキシャル成長した結果、プラスチック基板上に合成したInGaAs膜として初めてとなる分光感度の取得に成功した。次世代の高効率フレキシブル太陽電池開発に資する成果である。
|