研究課題/領域番号 |
20J20465
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 健太郎 東北大学, 環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
キーワード | 電気化学 / イムノアッセイ / レドックスサイクル / エンドトキシン / リムルス反応 |
研究実績の概要 |
感染症を初期段階から正確に診断できる手法の確立は、様々な深刻な感染症の拡大の抑止に貢献できる。現在、医療機関において広く用いられている感染症の診断手法はイムノアッセイを用いるものであるが、感度不足から発症前や発症初期における検体中のウイルスの検出が困難である。本研究では、イムノアッセイの高感度化を目的とし、連続した酵素反応であり反応が下流に進むにつれ生成物量が増幅するカスケード反応と、電流シグナルを高効率に増幅可能な電気化学測定法であるレドックスサイクルの、2つのシグナル増幅システムを組み込んだ新規イムノアッセイ系の構築を行う。 2020年度はまず、カスケード反応の1つであるリムルス反応を組み込んだイムノアッセイ系の構築を行った。リムルス反応を誘因するエンドトキシンと抗体を結合させ作製したエンドトキシン修飾抗体を評価したところ、エンドトキシンと抗体どちらも、修飾過程において活性低下は確認されず、エンドトキシン修飾抗体がイムノアッセイに用いることができることを確認した。また、磁性粒子上でエンドトキシン修飾抗体と市販ディスク電極を用いてヤギイムノグロブリンG(ヤギIgG)を測定モデルとしたイムノアッセイに成功し、リムルス反応を組み込んだイムノアッセイ系の確立に成功した。 次に、レドックスサイクル誘導デバイスとして、2つの電極間に190 nmの間隙を有するセンサデバイスを作製し評価したところ、レドックスサイクル非誘導時と比較して電流シグナルは119倍増幅することを確認した。 最後に、エンドトキシン修飾抗体と、測定に作製したレドックスサイクル誘導デバイスを用いて、ヤギIgGをモデルとしたイムノアッセイを行った。ヤギIgG濃度の上昇とともに電流シグナルも上昇し、カスケード反応とレドックスサイクルの2つシグナル増幅システムを有する新規イムノアッセイ系の構築に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では2020年度はエンドトキシン修飾抗体と、レドックスサイクル誘導デバイスの作製と評価までを行う予定であった。実際には、これら2つに加え、次年度以降に行う予定であったカスケード反応とレドックスサイクルの2つシグナル増幅システムを有する新規イムノアッセイ系の構築にも成功し、当初の計画以上に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
測定モデルであるヤギIgG以外の複数のタンパク質を測定に用いることで、確立したイムノアッセイ系の選択性評価を行う。また、リムルス反応以外の他のカスケードを組み込んだイムノアッセイ系の確立を行い、最終的には、リムルス反応ともう1つのカスケード反応を組み込んだ2つのイムノアッセイを同時に行うことで、シグナル増幅システムを有し多項目検出が可能なイムノアッセイ系の確立を目指す。
|