研究課題/領域番号 |
20J20468
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三野 巧 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | トポロジカル超伝導体 / マヨラナ多体系 / 非エルミート系 |
研究実績の概要 |
本年度は、「非エルミートマヨラナ系を用いたユニバーサルな量子コンピュータの提案」を掲げた.マヨラナ準粒子を用いた量子コンピュータは、Braiding操作のみでユニバーサルな量子ゲートが実現できないことから、ユニバーサルな量子コンピュータではないと言われている.近年、ユニバーサルな量子コンピュータとして期待されるnon-Abelian AnyonとしてFibonacci Anyonが提案されている.そこで我々は、Fibonacci Anyonと同じFusion則を持つYang-Lee Anyonが非エルミートマヨラナ系で実現することを解析的に得た.我々が提案する非エルミートマヨラナ系は、1次元トポロジカル超伝導体接合系に散逸を持つ電子浴を結合させることで実現される.電子浴との結合項が、Fermion parityの減衰機構に対応し、PT-対称な非エルミートとして振る舞う. 共形場理論に基づく有限サイズスケーリングと厳密対角化法により、Yang-Lee Edge criticalityを示すUniversality Classを定量的に評価した.さらに超伝導のCharging Energyなどを制御することにより、Yang-Lee Edge criticalityが安定して実現することも定量的に得られた.得られた結果はYang-Lee Edge criticalityの実現可能性を示唆するものであり、ユニバーサルな量子計算実現に向けた新しいプラットフォームであると期待できる. また現在上記の研究成果を論文に取りまとめており、アメリカ物理学会誌に投稿予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当年度の研究計画は、「非エルミートマヨラナ系を用いたユニバーサルな量子コンピュータの提案」であった.我々はトポロジカル超伝導体と電子浴との結合により、Fermion parityの減衰を伴う非エルミート系を実現した.この非エルミートマヨラナ系はYang-Lee anyonを誘起する系に対応しており、ユニバーサルな量子計算の候補となる系である.また定性的かつ定量的議論により、Yang-Lee Edge criticalityを安定化させるセットアップを明らかにした.以上のように当年度に掲げたテーマが遂行されたと判断できる.さらに双直交基底による物理量の評価により、Yang-Lee Edge criticalityを示唆する磁化の発散を示唆する結果が得られた.マヨラナ系ではFermion parityの発散に対応しているため、量子コンピュータのリードアウトとしての活用が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
我々の設計した系は、マヨラナ多体系と非エルミート物理の2面をもつ.両面とも近年注目されている物理であり、非エルミートマヨラナ系はこの2面の協奏により、Yang-Lee Edge criticalityを示す.従ってマヨラナ多体系に非エルミート性を追加することにより、新しいuniversality classが創発されると期待できる.また我々の設計した系でYang-Lee Edge criticalityを観測することは、マヨラナ準粒子観測の非常に強力なプローブであると期待できる.さらに数値計算スキームでは、DMRG,TEBDやMERAを非エルミート系に適応させることにより、熱力学極限での議論が可能になると考えられる.従って、数値計算スキームを拡充させるとともに、非エルミートマヨラナ系におけるYang-Lee Edge criticalityの観測に向けた具体的な方法を提案する.
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