研究課題/領域番号 |
20J20496
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
越川 拓海 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
キーワード | 連続環化反応 / ピリリウムカチオン / 金 / DFT計算 / エン-イン-カルボニル / [3+2]環化反応 / カルベノイド / C-H挿入 |
研究実績の概要 |
今年度の研究成果として、金触媒を用いたエンジイナール類の分子内連続環化反応の開発とDFT 計算による反応機構及び生成物の選択性の解明が挙げられる。 2000年代初めより様々な触媒を用いたイナール類とアルケンによる[3+2]および[4+2]環化反応が報告されてきた。しかし、それらのどの報告においてもDFT計算等による反応機構の解明は行われておらず、基質や反応条件により[3+2]と[4+2]環化反応の選択性が異なる理由が明らかになっていなかった。そのため、[3+2]環化により生成する7員環化合物と[4+2]環化による6員環化合物の作り分けが意図的には行えないという問題点があった。 本研究において私は、従来の基質にエチニルフェニル基を付加した新たな基質を合成し、その基質を一価のカチオン性金触媒と反応させると複数の縮環構造を有する多環性化合物が得られることを見出した。また、DFT 計算により、本反応の推定反応機構が妥当なものであることを証明し、加えて先行研究における[3+2]および[4+2]環化反応の選択性の違いを反応機構の面から解明した。これまでにDFT計算による解析はなされてこなかったため、本研究におけるDFT計算による反応機構解析は高い新規性を有している。また、[3+2]および[4+2]環化反応、そして私が発見した連続環化反応のそれぞれの選択性発現のメカニズムを解明したことは、更なる多環性化合物の合成法を探索するに有力な足がかりとなるものであると言える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
金触媒を用いたエンジイナール類の分子内連続環化反応に関して、基質適応範囲の拡大とDFT計算による反応機構の解析を行うことで、興味深い知見を得ることができた。特に、DFT 計算により、分子内連続環化反応の推定反応機構が妥当なものであることを示し、さらに先行研究における[3+2]および[4+2]環化反応の選択性の違いを反応機構の面から解明した。これらのメカニズムの解明は、今後の連続環化反応の設計に大きく寄与するものであり、さらなる新規連続環化反応の設計・発見を期待できる。 以上より、令和2年度の研究活動は、期待以上の大きな進展があった。
|
今後の研究の推進方策 |
現在既にピリリウムカチオンを経由する新規連続環化反応を発見し、その条件検討を進めている。今後はその連続環化反応の最適化研究と得られた生成物の機能性分子への変換研究を行っていく予定である。
|
備考 |
所属研究室のホームページ。投稿論文等が記載されている。
|