研究課題/領域番号 |
20J20572
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
久野 元気 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 片側大腿切断者 / 歩行 / 角運動量 / 転倒 / 義足 |
研究実績の概要 |
本年度はまず,現在までに取得した片側大腿切断者15名・健常者15名の歩行データセットを用いて,全身角運動量における制御機序の解明を行った.前年度まで解析によって,片側大腿切断者の全身角運動量の平均値は,健常者に比べ,矢状面・水平面において大きくステップ間での変動を有することが明らかとなった.本年度は,新たに各セグメントの角運動量の貢献度をAUC(Area under the curve)を用いて,各セグメント間および健常者-大腿切断者間での比較を行った.結果として,両平面において,義足肢の重量が健側肢よりも軽いことが影響し,全身の角運動量の変動を大きくする方向へ貢献していることが明らかとなった.一方で,その他のセグメント(健側肢・両腕)などが,これらの変動を小さくする方向へ貢献しており,片側大腿切断者に特有の歩容パターンが転倒のリスクを軽減していることを示唆した.前額面においては,片側大腿切断者における全身の角運動量のステップ間変動量は,健常者と同程度のものであった.しかしながら,立脚側の腕が持つ角運動量の貢献度が健常者とは大きく異なることから,片側大腿切断者の腕振り動作は,水平面だけでなく,前額面における動的バランス維持においても重要となることが示唆された.義足肢の質量および慣性パラメータが全身の動的バランス維持に大きく影響を及ぼしていることから,今後は義足肢の質量分布調整による転倒予防への介入効果の検証が必要となると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は,臨床現場での計測を実現するため,慣性センサを用いた簡便な角運動量計測システムの構築を行った.新型コロナウイルス感染症の影響により実環境での実験を行うことが困難であったため,1名の大腿切断者を対象とした予備実験データの解析を行った.全身の角運動量の変化量は,地面反力によるモーメントの時間積分値と一致する.したがって,慣性センサによる運動計測から得られた角運動量値と,地面反力計測から算出された角運動量値の比較を行った.次年度以降も、同手法を用いて引き続き計測システムの構築を行っていく.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,臨床現場におけるデータに基づいた即時介入と効果検証を行う.前年度までに作成した標準データセットと構築した計測システムを統合し,臨床現場における歩容改善および効果検証を行う.
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