研究課題/領域番号 |
20J20578
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
蒲生 浩憲 北海道大学, 情報科学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | ナノワイヤ / 結晶成長 / MOVPE / ナノ材料 / 半導体デバイス / ナノワイヤFET |
研究実績の概要 |
本研究では、半導体選択成長技術を用いてIn(Ga)As/GaSbコアシェルナノワイヤをSOI(111)細線構造上に選択成長する技術を確立する。このナノワイヤをチャネルとして用いることで、低消費電力化と高性能化を両立できる立体集積回路の基盤技術を確立する。具体的には、細線状に加工したSOI基板上にナノワイヤをコアとして、その側壁にSb系半導体を成膜したコアシェルナノワイヤでn型チャネルとp型チャネルの一括集積を図る。また、選択エッチングを用いることで、n型、p型の縦型トランジスタを同時作製する技術を確立する。さらに、縦型ナノワイヤFET構造からなる立体集積回路を作製し、回路動作を評価することで、超低消費電力・超高性能立体集積回路の実現を目指す。 研究期間を3年に設定し、(i) 結晶成長【In(Ga)As/GaSbコアシェルナノワイヤ集積とSOI細線上のナノワイヤ集積技術】、(ii) デバイス作製【InAsナノワイヤ縦型トランジスタとGaSbナノチューブ縦型トランジスタ作製】、(iii) 回路実証【インバータ回路・リング発振回路による評価】の3課題について取り組む。 R2年度では、主に下記の研究事項について実施した。 (i) Si上In(Ga)As/GaSbコアシェルナノワイヤ選択成長、(ii) In(Ga)As/GaSbコアシェルナノワイヤを用いたp型トランジスタの作製、(iii) SOI(111)細線構造加工技術確立
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(i) Si上InAs/GaSbコアシェルナノワイヤ選択成長:GaSbシェルの成長温度を450-540℃で変化させ、成長温度依存性について調査した。GaSb成長はSbの高い吸着性によって、他の半導体材料と比べて選択成長が困難であるという問題があるが、選択成長ナノワイヤの原子層レベルで平坦なファセット面をテンプレートとすることで、平坦なGaSb層を形成することに成功した。成長温度480℃まではGaSb層は平坦膜になるが、500℃ではNWの頂上部のNW(111)B面上にGaSbが二次元島成長することが分かった。また、540℃ではGaSbが長軸方向に成長し、ファセット上で局所的に二次元島成長することを明らかにした。 (ii) In(Ga)As/GaSbコアシェルナノワイヤを用いたp型トランジスタの作製:本研究グループ独自の縦型素子作製技術を用いて、p型トランジスタを作製した。この素子は、負のドレイン電圧がある一定以上印加されるとスイッチング動作することを確認した。また、n-InAs/p-Siヘテロ界面を用いたトンネルFETとしても動作することが明らかになっており、III-Vナノワイヤを用いた立体CMOS回路の実現に向けた大きな手掛かりを得た。 (iii)SOI(111)細線構造加工技術確立:Si(111)のウェット・ドライエッチングの最適化を実施した。また、SOI(111)細線構造上のナノワイヤ選択成長に向けて、プレーナーのSOI(111)基板上のナノワイヤ成長も実施し、垂直配向したナノワイヤが成長できることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度は、これらの知見を活かして、以下の研究を実施する予定である。 結晶成長: (i) Si(111)のウェット・ドライエッチングの最適化を行い、SOI(111)細線構造の加工技術を確立する。(ii) SOI(111)細線構造上のナノワイヤ選択成長について、プレーナーSi上のナノワイヤ成長と比較して、morphologyの違いを評価し、原料供給・ドーパントの取り込みについて明らかにする。 デバイス・回路: (i)n-Si細線構造上のIII-Vナノワイヤ縦型FETを作製し、スイッチング特性を評価する。(ii) p型FETの高性能化を図るために、ナノワイヤにドレイン、ゲート、ソース電極を配置した三端子構造を作製する。この構造は、Junctionlessであり、散乱を抑制し移動度低下を抑制し、コアのIn(Ga)Asナノワイヤによって、GaSbシェルが圧縮歪みし正孔移動度の増大が期待できる。また、GaSbシェルの薄膜化によりGaSbチャネルが完全空乏化することで低いオフリーク電流を実現する。(iii) SOI細線上のFETを作製し、クロスバーアレイの配線構造を試作し、デバイス特性を評価する。
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