研究課題/領域番号 |
20J20599
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石井 卓也 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 合成反応 |
研究実績の概要 |
本研究は、アルデヒドをアシルラジカル等価体として利用できる、新たなN-ヘテロ環カルベン有機触媒反応を開発し、本手法をアシル化の有用な手法として確立するものである。元来、求電子的な性質を有するアルデヒドを、N-ヘテロ環カルベンと反応させBreslow 中間体とすることで、ラジカル種として利用する反応を 開発する。一電子移動反応の特性を活かし、これまで困難であった一段階でのカルボニル化合物合成や、種々の置換基導入の新手法に展開する。具体的には、 1)N-ヘテロ環カルベン触媒アルデヒドアシル化を踏まえた、ラジカル型3成分カップリングによるケトン合成の開発、2)光酸化還元触媒を用いた、N-ヘテロ環 カルベン/光酸化還元触媒協働系による高還元電位化合物のアシル化の開発を実施する。本年度は、以下に述べるような研究成果が得られた。
これまでに報告したN-ヘテロ環カルベン触媒によるラジカル反応に基づき、新たな反応開発を行なった。ラジカル型N-ヘテロ環カルベン触媒反応では、N-ヘテロ環カルベンとアルデヒドから生成するエノラート型Breslow中間体からラジカル前駆体への一電子移動(SET)を進行した後、生じたラジカル同士がカップリングする。本年度中、エノラート型Breslow 中間体からヨウ化アリール化合物へのSETが進行すること、並びにSETを経て生じるアリールラジカルによって、水素原子移動(HAT)を効果的に利用した新たなアシル化反応を報告した。これは、活性化されていないC-H結合部位をターゲットとして、位置選択的にアシル基を導入できる新たな形式の変換反応である。さらに、本報告の特徴であるN-ヘテロ環カルベン触媒によるSETと分子内HATを組み合わせる手法を展開し、非活性化遠隔位C-Hアシル化反応への適用に向けた検討を行い、予備的知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究者は、当該年度、1)エノラート型Breslow 中間体からヨウ化アリール化合物への一電子移動が進行すること、2)一電子移動を経て生じるアリールラジカルを活用した水素原子移動が起こることを見出した。これに基づき、C-Hアシル化反応に展開した。本成果は、N-ヘテロ環カルベン触媒によるラジカル反応の新たな可能性を示した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目に、1)N-ヘテロ環カルベン触媒とアルデヒドから形成されるエノラート型Breslow中間体からヨウ化アリール化合物への一電子移動が進行すること、2)一電子移動を経由して生じるアリールラジカルによって、遠隔位C-H結合への水素原子移動が起こることを見出した。この知見に基づき、アルデヒドとアルケンを用いた、非活性化遠隔位C-H結合の3成分カップリング反応を開発する。N-ヘテロ環カルベン触媒の構造変換や各種条件の徹底的なスクリーニングを実施することで成功に導く。また、昨年度から引き続き、キラルN-ヘテロ環カルベン触媒の合理的な 設計に基づく不斉アシル化反応を検討する。さらに、N-ヘテロ環カルベン触媒と光酸化還元触媒を協働的に利用した高還元電位化合物のアシル 化反応にも挑戦し、高難度分子変換を実現する。
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