研究実績の概要 |
昨年度までの研究において、エノラート型Breslow中間体がヨウ化アリールを一電子還元し、アリールラジカルを与えることが明らかとなった。この報告では、o-ヨード芳香族カルボン酸とアルキルアミンから合成された“アミド誘導体”と“アルデヒド”をNHC触媒存在下、反応させると窒素α位がアシル化された生成物が得られた。本反応は、“窒素α位のC(sp3)-H結合”と“系中で発生したアリールラジカル”の間での1,5-HATを経由して進行する。この知見に基づき、本年度は、アリールラジカル駆動型1,5-HATを活用した、アルキルアミンのβ位選択的C(sp3)-H結合アシル化反応を開発した。つまり、窒素原子から二原子離れた位置にアリールラジカルを発生させることができる“o-ヨードアリール基”を窒素原子上に導入したアルキルアミンを設計・合成した。実際に、芳香族アルデヒドとチアゾール型NHC触媒を用いた反応に適用したところ、目的のβ位アシル化体が得られた。本反応では、窒素α位にてアシル化が進行した生成物は得られておらず、配向基として機能するo-ヨードアリール基の合理的な設計により、ラジカルの発生位置を能動的に制御できたといえる。本研究において、第48回反応と合成の進歩シンポジウム(2022年10月、千葉、ポスター発表、1P-45 「N-ヘテロ環カルベン触媒によるラジカル介在型アシル化反応)にてポスター発表を行い、発表賞を受賞した。
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