Imporved HQCD(IHQCD)はハドロン物理を解析する有効模型の一種である。模型はゲージ重力対応に基づく事実を取り入れており、超弦理論における重力を表す場を含む理論である一方、実験事実に即したチューニングを含む現象論的な模型である。有効模型本来の役割とは逆に実験データから模型を決定する手法を確立することで、ゲージ重力対応を通じた量子重力へのアプローチにつながると考えられるため、データ主導な方法でIHQCDの作用を決定することが重要である。 昨年度に引き続き、データ主導な方法として我々は、深層学習を使った時空創発と時空の情報から有効模型のポテンシャルの導出という2段階の方法を採り、その汎用性について調査した。 非ゼロ温度のデータを用いた場合、時空創発はゼロ温度の場合に比べて決定すべき自由度が多いという点で異なるが、本手法でポテンシャルの導出まで可能であることを実証した。 ホログラフィックQCD模型としてのゲージ不変量の予測を行った結果、データと同じ温度において格子計算の予測と無矛盾な結果が得られた。これは異なる物理量に対する汎用性があることを示唆してる。一方で、ゼロ温度データから導いた場合との比較や温度依存性に関する考察により、温度に関する汎用性が限定的であるという結論に至った。実験データの温度依存性の情報を十分に取り入れることで本手法の汎用性が拡大できると期待される。
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