研究実績の概要 |
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、市販医薬品の作用標的の約30%を占める重要な創薬標的である。GPCR下流で活性化する三量体Gタンパク質はその機能から4種 (Gs, Gi, Gq, G12)に分類されるが、G12を介した機能は未だ不明な点が多い。近年、特定のGタンパク質を任意の場所・時間で活性化する手法としてデザイナーGPCRが着目されている。我々は先行研究において、新たにG12共役型デザイナーGPCR(G12-DREADD)を作製した。本研究ではG12-DREADDを用いて糖代謝や脂肪代謝におけるG12の機能を個体レベルで解析し、新規創薬標的となりうるG12共役型GPCRを同定を目指している。 まず、マウスにG12-DREADDを組織特異的に発現させるため、cre recombinase依存的にG12-DREADDを発現するマウスをCRISPR-Cas9システムを用いて作製した。このマウスと平滑筋特異的にcre recombinaseを発現するTagln-creマウスを交配し、産仔にCNOを投与したところ、既知のG12の機能である血管平滑筋の収縮とそれに伴う血圧上昇が誘導された。以上の結果から、G12-DREADDは個体においても機能的であり、G12の活性化制御が可能であることが示された。 次に、肝臓におけるG12シグナルの機能を評価するため、肝細胞特異的にcre recombinaseを発現するalbmin-creマウスと交配を行い、脂肪肝発症に対するG12シグナルの寄与を評価した。G12-DREADDリガンド(CNO)を連続投与した後に、絶食によって脂肪肝を発症させたところ、G12-DREADDの活性化は脂肪の蓄積を抑制した。この結果から、G12シグナルは脂肪肝の治療に有用である可能性が示唆された。
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