研究課題/領域番号 |
20J20669
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小野 雄基 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | GPCR / G12 / DREADD / ベージュ脂肪細胞 / 脂肪肝 |
研究実績の概要 |
先行研究において作製したG12のみを選択的に活性化する人工GPCR(G12-DREADD, 以下G12D)をcreリコンビナーゼ依存的に発現するマウスを用いて、組織特異的なG12の機能解析を進めた。 Adipoq-creマウスとの交配によってG12Dを脂肪細胞特異的に発現させたマウスを作製し、白色脂肪のベージュ化に着目して解析を行った。合成リガンドCNO投与によるG12D単独での活性化は、白色脂肪の形態・ベージュ化関連遺伝子の発現に影響を与えなかった。一方で、CNOと同時に代表的なベージュ化刺激であるベータ3アドレナリン受容体作動薬を投与したところ、G12Dを発現するマウスでは、ベータ3アドレナリン受容体刺激によるUcp1やCideaの発現上昇が増強した。また、組織切片をHE染色で観察したところ、G12Dを発現するマウスでは多房性のベージュ脂肪細胞の増加がみられた。さらに、G12Dの活性化はベータ3アドレナリン受容体作動薬の熱産生亢進作用と抗肥満作用を増強することを明らかにした。以上から、G12Dの活性化はベータ3アドレナリン受容体作動薬による白色脂肪のベージュ化を亢進すると考えられた。 Albumin-creマウスとの交配によってG12Dを肝臓特異的に発現するマウスでは、G12Dの活性化が高脂肪食によるマウスの体重増加と脂肪肝を抑制することを見出した。また、G12Dの活性化は絶食により誘導した脂肪肝も抑制した。このとき肝臓からの中性脂質の分泌は減少し、肝臓での脂肪酸β酸化関連遺伝子群の発現には変動がみられずこれらの経路では脂肪肝の抑制は説明されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は様々な疾患モデルマウスにおいてG12Dの活性化が病態の改善に寄与するか解析することを予定していた。研究実績の概要に示したように、脂肪細胞におけるG12Dの活性化がベージュ化を亢進することで肥満を抑制することや、肝細胞におけるG12Dの活性化が脂肪肝や肥満を抑制することを見出しており、当初の計画通り研究が進展したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪組織においては、G12Dによるベージュ化亢進作用のメカニズム解析と、内在性に発現するG12共役型GPCRの同定を進める。ベージュ化亢進作用については、培養細胞における候補分子の阻害剤やノックダウンを用いた解析を計画している。また、肝臓においては、G12D活性化時のメタボローム解析やトランスクリプトーム解析などの網羅的解析を進めており、この解析結果から脂肪肝抑制機構の解明を目指す。
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