研究実績の概要 |
先行研究において作製したG12のみを選択的に活性化する人工Gタンパク質共役型受容体(G12共役型DREADD, 以下G12D)を脂肪細胞特異的に発現するマウスを用いて、脂肪細胞におけるG12シグナル経路の機能解析を脂肪組織のベージュ化反応に着目して進めた。 昨年度までに、脂肪細胞におけるG12Dの活性化は代表的な脂肪組織のベージュ化誘導刺激であるベータ3アドレナリン受容体刺激による脂肪組織のベージュ化を亢進することを明らかにしてきた。今年度は、脂肪組織のRNA-seq解析を行うことでG12Dの活性化が酸化的リン酸化や脂肪酸代謝といったベージュ化に特徴的な経路の発現を亢進することを網羅的な遺伝子発現の観点から見出した。さらに、東北大学医学系研究科分子代謝生理学分野との共同研究により、マウス皮下脂肪組織から脂肪前駆細胞を単離して培養下で成熟脂肪細胞へと分化誘導する実験系を導入し、これを利用してG12Dによるベージュ化亢進作用はG12の代表的な下流分子であるROCKとミオシンⅡに依存することを明らかにした。ベージュ脂肪細胞はエネルギー消費を増加させるから、本研究成果は新規肥満治療薬への展開が期待される。 上記の脂肪細胞に着目した解析に加えて、ケラチノサイト特異的にG12Dを発現するマウスを作成してケラチノサイトにおけるG12シグナル経路の機能解析にも着手した。ケラチノサイトにおけるG12Dの活性化はバリア機能に関連する遺伝子群の発現を上昇させ、実際にテープストリッピング操作による経皮水分蒸散量の上昇を抑制した。今後、このメカニズムについての解析を進めたい。
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