研究実績の概要 |
昨年度はコロナで研究できない期間が非常に長かったにも関わらず、2報の論文を投稿することができ多くの成果を上げることができた。また、オンラインで国内だけではなく国際学会にも参加する機会があり、2件のポスター賞を受賞することができた。 以前から引き続き行っているメカノケミストリーによる固体クロスカップリング反応の開発を行っている。メカノケミカル条件下における液体と固体の基質の反応性の違いに着目することで、溶液系とは異なる選択性の発現に初めて成功した (Seo, T.; Kubota, K.; Ito, H. J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 9884.)。メカノケミカル条件下においては液体の基質は拡散効率が高いため反応性が高いのに対して、固体の基質は拡散効率が低いため、反応性が低い。この反応性の違いを利用することで、2か所の反応点を有する基質に対して反応を行ったところ、溶液条件下では2か所反応した化合物が主生成物として得られるのに対して、メカノケミカル条件下では1か所のみが反応した化合物が主生成物とし得られる。 さらに、以前報告した固体状態で進行する鈴木宮浦クロスカップリング反応は、有機溶媒に溶けにくい難溶解性の基質に対しては適用できないという問題点が残されていた。それに対して以前報告した触媒系にプラスして外部からヒートガンを用いて加熱をしながら反応を行う、加熱ボールミル法を用いて反応を行うことで、難溶解性のアリールハライドに対するクロスカップリング反応の開発に成功した(Seo, T.; Toyoshima, N.; Kubota, K.; Ito, H. J. Am. Chem. Soc. 2020, 143, accepted.)。この手法を用いることで、溶解性問題から溶液系では合成できない化合物群に対するクロスカップリング反応にも成功している。
|